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【特集】
腎機能不全と呼吸不全をきたした活動期SLE合併妊娠の1例
小林 祐介, 松浦 眞彦, 中村 晃和, 佐々木 重胤, 山本 樹生
日本大学医学部附属板橋病院産婦人科,総合周産期センター
一般にSLE(全身性エリテマトーデス)は妊娠中,母体の免疫寛容状態や内因性ステロイドの増加のため軽快し,分娩後増悪すると言われている.しかし,必ずしもすべての症例に当てはまるとは限らず,妊娠中の増悪の程度は妊娠前のSLE活動性と相関するため寛解状態を確認する必要がある.今回,我々は活動期にあるSLE合併妊娠の症例を経験した.症例:21歳2回経妊0回経産.前医にてITP(特発性血小板減少性紫斑病)と診断され妊婦健診を受けていた.妊娠15週頃に顔面,下腿浮腫,関節痛が出現し,採血上Hb:7.4 g/dl PLT:15.0×104/μl,CH50:13 U/ml,ANA(+),抗カルジオリピン抗体(+),抗RNA抗体(+),尿蛋白3(+)のためSLE合併妊娠の疑いで当院に紹介となった.妊娠18週6日よりSLE,APS合併妊娠の疑いでプレドニン20 mg/日 アスピリン100 mg/日内服開始した.妊娠19週3日呼吸苦にて救急搬送となった.SLE急性増悪である肺臓炎,胸膜炎,ループス腎炎の診断にてステロイドパルス(1,000 mg×3日)を行った.呼吸状態は改善したが,ループス腎炎による低蛋白血症と腎機能不全(BUN/Cre=34/1.1 Ccr 34.7)は改善しなかった.SLEは活動期であるため妊娠の継続をはかったが妊娠23週4日,肺胞出血による呼吸不全をきたし血漿交換とステロイドパルスによる加療を行い,呼吸状態が安定した妊娠25週6日に帝王切開を行った.娩出後,腎機能の改善は認められなかったが,補体は上昇しSLEは増悪せず退院となった.
Key words:Systemic lupus erythematosus, Renal failure, Respiratory failure
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 48(1)
87-93, 2011
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