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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))

【特別講演】
産婦人科医療の動向と展望


古川 俊治1,2,3)
慶應義塾大学法科大学院・医学部外科1),TMI 総合法律事務所2),参議院議員3)


 近年,各地で出産医療を扱わない医療機関の増加や周産期医療に従事する医師数の減少が指摘されてきた.その結果,救急受診が必要な妊婦の受け入れ先医療機関が容易に見つからない,或いは妊婦が遠隔地の病院・診療所で出産しなければならないなどの問題が生じた.産婦人科医師が減少した大きな理由としては,過酷な勤務と医療紛争の増加が指摘されている. 近年の調査報告では,常勤産婦人科医師が一人の病院がかなりの割合となり,有床診療所では7割近くとなっている.医師の負担を軽減するには,産婦人科医師の集約化が必要と考えられる.しかし,近隣の医療機関が産科医療を廃止したため,遠方の医療機関に受診することが必要となると,救急時の搬送体制が十分に整備されるかが問題となる.また,産科医療に関する診療報酬を厚く評価することにより,産婦人科を選択する医師数を増やそうとすることも考えられる.ただし,産科医療は大部分が自由診療であり,診療報酬上の評価が医師の収入の上での動機付けとなる効果は限られるのではないか,医師は初期臨床研修終了時に診療科を決定するため,診療報酬上の評価が医師数増加には結び付きにくいのではないか,などの疑問もある.産婦人科は,女性医師の割合が比較的高い診療科(医師全体では18.1%であるが,産婦人科は25.9%,平成20年12月31日現在)であり,女性医師の離職防止・復職支援も重要と考えられる.近年,女性医師の出産・育児などを考慮した勤務形態を導入する医療機関も増加しているが,女性医師の産休・育休などに代替医師を確保出来るのか,などの課題もある. 医療紛争については,従来,産婦人科医療では医師一人当たりの医事紛争数が多いことが知られ,かつ母体と胎児・新生児が関与するため,産科関連の訴訟では,損害賠償額が高額となり易いという特徴がある.また,福島県大野病院事件に象徴されるように,近年,医療事故について,異状死の届出義務(医師法21条)違反や業務上過失致死傷(刑法211条1項前段)の疑いがあるとして,刑事司法が医療へ介入する事案が多くなった.これらの状況が,産科に従事する医師の大きな負担になっている.民事紛争については,産科医療補償制度が創設・運用されているが,それが医療現場の医事紛争に関する負担をどの程度改善するかは明らかではない.補償額が一定限度となっているため,補償額に納得しない患者側は,一層の賠償を求めて訴訟を提起するであろう.また,刑事司法に関しては,医師法21条を改正するとともに,事故調査のための中立的第三者機関を創設し,医療専門家を中心とした検討により,故意または重大な過失がある(標準的な医療から著しく逸脱している)と認められた事案のみを刑事司法の対象とする法案が作成されているが,未だコンセンサスが得られず,2011年3月現在,法案成立の見込みは立っていない. 婦人科医療については,主としてがん対策が政策の課題となっている.健診受診率の向上,HPVワクチンの法定接種化などが問題となっている. 何れにせよ,他の診療科同様,産婦人科医療の環境を改善するためには,十分な医療財源を確保する必要があり,消費税を含む税制の抜本的改革が必要となっている.


関東連合産科婦人科学会誌, 48(2) 150-151, 2011


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