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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))

【シンポジウム】
PCOSにおけるホルモン治療


松崎 利也
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部産科婦人科学


 国内の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の25.9%は肥満を伴っている.肥満PCOS症例ではインスリン抵抗性が病態形成に大きく関与しており,治療としては減量を試みることが重要である.減量が成功すれば,7〜8割の患者で病態が改善し月経周期が回復する.減量ができなかった患者や非肥満例には,主訴と症状に応じた治療を行う.排卵誘発治療は細やかな管理が必要で,不妊治療として行うものである.したがって,不妊の主訴があるか否かで治療法が大きく異なる.妊娠を希望しない場合には月経異常に対する治療が中心となり,通常はホルムストローム療法を行う.これは不正性器出血の防止や子宮内膜癌の予防を目的としている.月経異常に加え多毛・ニキビの治療も希望している場合には経口避妊薬(OC)の使用を考慮する.PCOS患者の多毛・ニキビはアンドロゲン過剰の症状なので,OCによりゴナドトロピン分泌が抑制され卵巣由来のアンドロゲン産生が低下すると,それらの症状も改善する.使用するOCとしては,アンドロゲン活性のない黄体ホルモンを使っている製剤が理論上は適している.一方,妊娠を希望している患者では排卵誘発を行い,クロミフェンを第一選択とする.クロミフェンで排卵しないか,排卵しても妊娠が成立しない場合には,FSH低用量漸増療法または腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)を選択する.クロミフェンで排卵しなかった症例でやせ体型でないなら,クロミフェンとメトホルミンの併用も選択肢となりうる. メトホルミンは,PCOSの治療においていくつかの効果を期待して用いられているが,エビデンスは限局的である.メトホルミン単独療法もクロミフェン-メトホルミン併用療法も,不妊治療の第一選択としてはクロミフェン単独療法を上回る臨床成績は認められていない.しかしながら,対象をクロミフェンで排卵が起きない症例として,クロミフェン-メトホルミン併用療法を行うと,排卵率,生児獲得率がクロミフェン単独療法よりも高くなることはメタ解析により証明されている.また,メトホルミンを使用した治療で妊娠した児で,奇形の発生率は一般の率と同等とされる.また,他の排卵誘発薬で排卵する症例に対する妊娠率の上昇,生殖補助医療での妊娠率上昇,流産を繰り返す症例での流産率低下,妊娠中の継続投与による妊娠糖尿病発生率低下も期待されるが,エビデンスが無いのが現状である.国内文献を集計すると,クロミフェン抵抗症例に対するクロミフェン-メトホルミン併用療法の症例別排卵率は56.4%(44/78)とクロミフェン単独の28.2%(11/39)に比べ高率であった.PCOSの不妊治療にメトホルミンを用いた症例の臨床成績について,中国四国の施設を中心としたアンケート調査を行った結果についても報告する.


関東連合産科婦人科学会誌, 48(2) 159-159, 2011


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