|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【シンポジウム】
ARTにおけるGnRH antagonistの使用状況
久慈 直昭
慶應義塾大学医学部産婦人科
体外受精・顕微授精などの生殖補助技術(以下ART)において,hCG投与前に起こる内因性LHサージ(premature LH surge)は自然周期を含む全ての採卵周期において有害であり,これを抑制することは成熟卵の採取に必須である. premature LH surgeを抑制する方法として,現在ではGnRHアンタゴニスト(以下アンタゴニストと略)が用いられる事が多い.通常アンタゴニストは,遺伝子組み換え型FSH(以下recFSHと略)/hMGの連日投与に併用され,recFSH/hMGによる卵巣刺激開始6日目からhCG等による排卵誘発刺激当日まで,cetrorelixあるいはganirelix O.25mgを連日投与するfixed-multiple-doseプロトコールが用いられる. アンタゴニスト併用卵巣刺激法とGnRHアゴニスト併用卵巣刺激法を用いたARTの比較では,アンタゴニスト群では臨床的妊娠率および妊娠継続率/生産率は有意に低いと報告されており,採卵数の減少やアンタゴニストによる内膜への直接作用がその原因と考えられている.一方でアンタゴニスト群では,OHSSの発生率は有意に低く,またOHSSを回避するための周期キャンセルなどの医療介入頻度はアゴニスト群で有意に少ない. アンタゴニストを使用して排卵誘発を行う場合,前周期に低用量ピルを使用する事の可否については議論がある.最近のメタアナリシスでは,妊娠率を低下させるという結果も出ているものの,臨床的には採卵数を増加させる例も確かに存在する. またアンタゴニストを使用した場合,卵胞の最終的triggerをアゴニストによって行うことが可能である.最近のメタアナリシスでは生産分娩率を見る限り全例への使用は推奨できないとされているが,OHSSの危険がある時や,頻回の通院が難しい患者には応用可能な方法であろう. このようにARTにおけるアンタゴニスト併用療法は,GnRHアゴニストによるlong―protoco1と比べ妊娠率や生産率に差があるとしてもごくわずかであり,またクロミッド-recFSH/hMG法やminimal stimulation法といったpatient-friendlyな卵巣刺激法に応用可能であることから,今後ますます頻用されると考えられる.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
160-160, 2011
|