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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
19,000mLの大量出血をきたし産褥早期にSheehan症候群および両側下肢末梢神経障害を発症した1例
林 昌子, 大屋 敦子, 中西 一歩, 桑原 知仁, 山岸 絵美, 阿部 裕子, 印出 佑介, 奥田 直貴, 川端 伊久乃, 三宅 秀彦, 中井 章人
日本医科大学多摩永山病院産婦人科
症例は38 歳2 回経妊0 回経産.既往歴:遺伝性球状赤血球症にて15 歳時に脾摘.妊娠歴:36 歳・37 歳で2 回自然流産.現病歴:自然妊娠成立後,他院にて反復流産の適応でアスピリン・ヘパリン療法を施行し妊娠管理,当院分娩目的で紹介となった.妊娠39 週1 日,前期破水・陣痛発来にて入院,その後急激に分娩が進行し,胎児機能不全で吸引分娩.3434 g の男児をApgar score 6 7 で娩出した.臍帯動脈血pH 7.295,胎盤遺残も認めなかった.腟壁裂傷が後腟円蓋付近に及び止血縫合困難で,分娩直後より3 時間で出血量は6,000 mL に及んだ.大量輸血と共に抗ショック療法,抗DIC 療法を施行し,手術室で全身麻酔下に裂傷縫合を試みるも完全止血し得ず,時間経過と共に弛緩出血も併発し腹式単純子宮全摘術を施行,第7 凝固因子の投与を考慮したが入手できず,再度の腟内ガーゼ充填と用手圧迫で分娩14 時間後にようやく止血,バイタルサインも安定した.総出血量は19,650 ml,輸血量は照射赤血球濃厚液60 単位,新鮮凍結血漿64 単位,血小板濃厚液40 単位であった.その後,麻酔覚醒時より両下肢の電撃痛と感覚障害を訴え,精査の結果両下肢末梢神経障害の診断に至り,保存療法とリハビリテーションで改善傾向を認めた.さらに産褥10 目頃より低Na 血症を呈し,LH RH,TRH,CRH 負荷試験等の末にSheehan 症候群の診断に至り,ステロイド投与にて改善し,産褥38 日目に退院に至った.大量出血後の患者においては早期にSheehan症候群や末梢神経障害を発症する可能性も念頭において診療に当たることが重要と考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
167-167, 2011
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