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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
前置癒着胎盤症例に対するcesarean hysterectomy時の大量出血予防:NBCAを用いた子宮動脈塞栓術の有用性
小宮 春奈, 安部 加奈子, 玉井 はるな, 小倉 剛, 小畠 真奈, 濱田 洋実, 吉川 裕之
筑波大学産婦人科
【背景】前置癒着胎盤症例の帝王切開術は,大量出血による母体死亡も起こり得る極めて困難な手術であるため,周術期の出血量を低減するための工夫が各施設で試みられている.当院では以前よりゼラチンスポンジを用いた子宮動脈塞栓術を併用してcesarean hysterectomyを行ってきたが,さらなる出血量の低減のためにNBCA(N-butyl-cyanoacrylate)を用いて子宮動脈塞栓術を試みて良好な結果を得られたので報告する.【症例】42歳2経妊1経産(41歳時に帝王切開分娩).自然妊娠し前医にて初期より妊婦健診を受けていた.妊娠26週に全前置胎盤を指摘され,MRIおよび超音波にて穿通胎盤が疑われたため,妊娠33週5日に当科紹介となった.MRI,超音波および膀胱鏡にて全前置胎盤の前回帝切創への穿通胎盤が疑われた.妊娠37週2日に全身麻酔下で両側尿管ステント挿入後,両側内腸骨動脈にバルーンカテーテルを留置し,古典的帝王切開術により児を娩出した.8倍希釈NBCA―Lipiodolで子宮動脈塞栓を行い子宮動脈が上行枝まで鋳型状に塞栓された.子宮頸部への残存血流があったためゼラチンスポンジ,マイクロコイルでの塞栓を追加した後,子宮全摘術を施行した.術中出血は1320mlで自己血600ml返血のみで術後Hb10.4,経過順調で術後8日目に母児ともに退院となった.病理検査では穿通胎盤であった.【結語】全前置胎盤の前回帝切創への穿通胎盤に対してNBCAを用いた子宮動脈塞栓術を併用してcesarean hysterectomyを行い術中大量出血が回避できた.NBCAは短時間に子宮動脈末梢まで鋳型状に塞栓できるために子宮動脈の血流遮断が確実であり,前置癒着胎盤にも有用である可能性が示唆された.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
173-173, 2011
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