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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
経腟超音波断層法所見を契機として癒着胎盤を疑った1例
片山 素子, 谷垣 伸治, 荒岡 千景, 上原 一朗, 綱脇 智法, 松島 実穂, 松澤 由記子, 和地 祐一, 井澤 朋子, 酒井 啓治, 岩下 光利
杏林大学産婦人科
【緒言】癒着胎盤を確定診断する方法はいまだ確立されていないために,本疾患の可能性があるハイリスク群を抽出し充分な準備をすることが重要である.本疾患を疑う所見の大半は経腹超音波断層法やMRIによるものである.今回我々は経腟超音波断層法所見より癒着胎盤を疑い得た症例を経験したので報告する.【症例】34歳,2経妊0経産.筋腫核出術の既往を有するが,子宮切開創は胎盤付着側と反対側である.妊娠17週より切迫流産の診断にて入院した.入院後,原因不明の出血が持続した.経腹超音波断層法上,胎盤は前壁にあり,前置胎盤や胎盤早期剥離を示唆する所見は認めなかった.経腟超音波断層法にて子宮頸管内に多発する低輝度エコー像(sponge like echo)を認め,カラードプラ法を施行したところ豊富な血流を認めたことから,癒着胎盤を疑い精査を開始した.その後の経腹超音波断層法ではスイスチーズ様エコー像があり,骨盤MRIでも胎盤組織と子宮筋層の区別が不鮮明であることから,癒着胎盤がさらに強く疑われた.妊娠36週に尿管ステント留置後,内腸骨動脈バルーン留置下で一期的に選択的帝王切開術と子宮全摘術を施行した.摘出子宮の病理組織検査は嵌入胎盤であった.【考察】妊娠中期以降の経腟超音波断層法は頸管長の測定や前置胎盤の診断に重きをおかれがちであるが,癒着胎盤のような重篤な疾患の発見の端緒となる所見を見出しうる検査法であり,その重要性を再認識した.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
174-174, 2011
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