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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
高度肥満の子宮体癌症例に対する手術時の工夫
荒岡 千景, 吉田 丈児, 木下 孝一, 橋本 志歩, 山田 研二, 宮田 あかね, 吉丸 真澄, 佐藤 卓, 仲村 勝, 佐藤 健二, 小川 真里子, 高松 潔
東京歯科大学市川総合病院産婦人科
【緒言】子宮体癌治療の第1選択は手術であるが,高度肥満例はリスクが高く,手術を躊躇する場合も少なくない.今回,高度肥満で合併症を有する子宮体癌症例に開腹術を施行したので,工夫点を含めて文献的考察を加え報告する.【症例】48歳2経妊2経産.不正性器出血にて当院受診.体重140kg,身長160cm,BMI 54.7 であった.類内膜腺癌G 1 で進行期はIa 期と診断した.高度肥満に加え,糖尿病,高血圧,閉塞性動脈硬化症を有したため,手術はリスクが高いと判断,放射線療法(腔内照射68 Gy)を施行したが,5 ヵ月後の内膜生検で腫瘍遺残を認めたため,関連各科と相談の上,腹式単純子宮全摘術及び両側付属器切除術を施行した.肉眼的筋層浸潤は認めずリンパ節郭清は行わなかった.手術時に以下の工夫を行った.1)開腹時,腹膜と皮膚を絹糸で縫合し開創器をかけやすくした.2)閉腹時,側方へのテンションで離開するのを防ぐため,エバート縫合で筋膜縫合を施行した.3)死腔が出来ないよう閉鎖式皮下ドレーンを挿入し陰圧をかけた.4)皮下及び皮膚は垂直マットレス縫合し,創面全体が軽く密着し均等に力がかかるよう,創の両サイドに太巻きガーゼを置くボルスター縫合を行った.5)ボルスター縫合においては,感染の可能性を考え,ネラトンを使用した.術後は低分子ヘパリンを3 日間皮下注,さらに腹帯の長期装着を指導した.術後経過は良好で7 日目に抜糸したが,血栓症や創トラブルは認めなかった.【考察】高度肥満例は血栓症・創部離解のリスクが高いが,抗凝固療法の進歩や腹壁縫合の工夫などによって,より安全に手術の施行が可能であると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
177-177, 2011
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