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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
妊娠後期に癒着部が断裂し,母体出血性ショック,IUFDになった子宮内膜症合併症例の一例
加藤 紀子, 小堀 宏之, 鈴木 敏史, 平井 千裕, 島貫 洋太, 永井 富祐子, 糸賀 知子, 西岡 暢子, 山本 勉
越谷市立病院産婦人科
<諸言>昨今の生殖補助技術の進歩などにより子宮内膜症合併妊娠症例が増加し,その問題点が注目されている.今回,妊娠後期に子宮動静脈近傍の血管が断裂し,腹腔内出血による母体出血性ショックおよびIUFDになった子宮内膜症合併妊娠症例を経験したので報告する.<症例>32歳.0経妊0経産.近医産婦人科において妊婦健診を受けていた.妊娠初期の超音波で5cm大の右卵巣チョコレート嚢胞を指摘されていたが,その後の増大は認められなかった.妊娠29週6日,下腹部痛を自覚したが,近医指示により塩酸リトドリンを内服し自宅安静で経過観察となった.翌日,下腹部痛が増強したため近医を受診した.その直後より母体はショック症状を呈し,また胎児心拍数は持続性徐脈であり,間もなくIUFDとなった.直ちに母体救命目的で当科に緊急搬送となった.当院到着時,shock indexは2.0であり,意識レベルもJCS100の状態であった.腹部エコーで著明なecho free spaceを認め腹腔内出血を疑い緊急手術と至った.開腹時,腹腔内に多量の腹腔内出血認め,子宮内膜症により癒着がみられた子宮動静脈近傍の血管が断裂しており,持続する出血が認められた.総出血量は約5000mlにおよび,RCC―LRを18単位,FFPを30単位,PC―LRを20単位輸血した.術後は順調に経過し,術後7日目に退院となった.<結語>一般的に妊娠中に卵巣チョコレート嚢胞を認めた際には巨大なものを除いて経過観察となる.本症例のように子宮内膜症に伴う癒着病変組織の破断により,腹腔内出血に至る事は非常に稀ではあるが,子宮内膜症合併妊娠症例ではこのようなリスクがある事を念頭に置く事が大切であると思われた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
180-180, 2011
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