|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
右卵巣静脈周囲に著明なリンパ管拡張を伴った子宮筋腫の一例
堀澤 信, 芦田 敬, 宮本 翼, 古川 哲平, 松原 直樹, 山崎 輝行
飯田市立病院産婦人科
子宮筋腫が周囲のリンパ管を圧迫・閉塞し,リンパ管拡張にまで至ることは稀である.今回我々は,子宮周囲から右卵巣静脈に沿って著明なリンパ管の嚢胞状拡張を認めた子宮漿膜下筋腫の症例を経験したので報告する.【症例】46歳,未経妊.現病歴:2010年2月ころより腹部膨満感を自覚していたが放置していた.7月の検診で長径20cmの骨盤内充実性腫瘍と右付属器領域の嚢胞性腫瘤を指摘されたため,当科紹介となった.診察所見:腟分泌物は白色少量,下腹部に可動性のある成人頭大の硬い腫瘤を触れた.画像所見:MRIでは,子宮体部は腫大なく,前方に長径20cmの有茎性腫瘍を認め,腫瘤右側に不整形の多房性嚢胞構造を認めた.子宮筋腫または子宮肉腫,後腹膜腫瘍などの可能性も考慮し,開腹手術を行った.術中所見:腹腔内に癒着や腹水を認めず,子宮体下部右側より広間膜内に発育した漿膜下腫瘍を認めた.この腫瘍は容易に腹腔外に挙上でき,その右側に柔らかい嚢胞性腫瘤を認めた.後腹膜腔を展開すると,この腫瘤は右卵巣静脈沿いに発育し,上縁は下大静脈分岐部まで続いていた.嚢胞性腫瘤にはリンパ管や静脈が多数流入しており,これらを結紮し,嚢胞を破綻させないように剥離し,その上で子宮・両側付属器を摘出した.組織診断:漿膜下腫瘍は平滑筋腫であり,壊死と出血を伴うものの,核分裂像はほとんど認めなかった.嚢胞性腫瘤は右卵巣静脈を取り巻いており,組織学的には拡張した多数のリンパ管と静脈であった.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
183-183, 2011
|