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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))

【一般演題】
妊娠中期に原因不明の劇症肝炎を発症し生体肝移植により救命し得た1例


堀越 義正, 大川 直子, 仲谷 傳生, 加茂 亜希, 山崎 香織, 中村 友紀, 加藤 誠, 内田 季之, 鈴木 一有, 杉原 一廣, 伊東 宏晃, 金山 尚裕
浜松医科大学産婦人科


症例は31歳,1回経妊,1回経産婦.既往歴,家族歴に特記すべき事はない.無月経となり某医Aで妊娠と診断され,定期的に健診を受けていた.倦怠感,食欲不振,右季肋部痛を認め,妊娠32週6日に同医を受診.肝臓逸脱酵素の上昇を認めたためHELLP症候群の疑いで当院へ緊急搬送された.来院時,血圧 123/75 mmHg,尿蛋白(−).意識清明,眼球結膜は黄染し,右季肋部に持続性の疼痛を認めた.LDH 735 IU/lであり,AST 1,553 IU/l,ALT930 IU/l と肝臓逸脱酵素の上昇を認めたが,血小板数は29.9 万/μl と正常であった.また,総ビリルビン4.8 mg/dl,APTT 58%,PT 97%,BUN 6.0 mg/dl であった.超音波断層検査では肝臓の腫大や萎縮はなく,脂肪蓄積を疑う所見は認めなかった.以上より急性肝炎と診断し,肝庇護剤を投与して保存的に経過を観察した.肝炎ウイルスのスクリーニングは全て陰性,自己免疫性疾患は否定的であった.入院後,急激に肝機能障害が進行したため,妊娠33週3 日に緊急帝王切開術を施行し,2,268 g の男児をアプガー6 点で分娩した.産後,肝機能障害は増悪し,産褥3日にはIV〜V 度の肝性脳症を来たし,急性型の劇症肝炎と診断した.血漿交換と人工透析を開始したが,全身状態は改善せず肝不全が進行した.産褥5 日に生体肝移植を目的としてヘリコプターでK 病院へ転院し,同日に実父をドナーとする血液型不適合生体肝移植を行った.液性拒絶予防目的の抗CD 20 抗体(リツキシマブ)を術中に投与した.術後経過は良好で肝移植後64 日でK 病院を退院した.摘出した肝臓の病理所見は広範性肝壊死の所見であり,劇症肝炎の原因は特定できなかった.


関東連合産科婦人科学会誌, 48(2) 199-199, 2011


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