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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))

【一般演題】
特発性に胎児房室ブロックをきたした1例


祖川 侑子, 牧野 真太郎, 河野 彩子, 稲垣 徹訓, 久保田 絵美, 依藤 崇志, 輿石 太郎, 杉村 基, 竹田 省
順天堂大学産婦人科


<緒言>胎児完全房室ブロックは胎児心構造異常や母体膠原病を認めることが多く,特発性の発症報告は稀である.今回我々は特発性に胎児完全房室ブロックを認めた1例を経験したので報告する.<症例>症例は40歳,1経妊1経産で,妊娠23週の妊婦健診時に胎児不整脈を指摘され,前医受診となった.超音波検査にて完全房室ブロックと診断され,当科紹介受診となった.当院初診時の心房収縮140bpm,心室収縮47bpm程度で,心構造異常は認めなかった.胎児心拍モニタリングが困難であり頻回の超音波検査を行う目的で妊娠30週5日に管理入院となった.母体血液検査では,抗SSA/Ro抗体,抗SSB/Lo抗体は共に陰性であった.胎児心拍数増加目的に,母体へ塩酸リトドリン100μg/min持続点滴を行い経過観察を行ったところ,心房収縮144bpm,心室収縮53bpm程度へ増加し安定した.胎児のCTARは38%で,軽度心拡大を認めたが,EF 67%程度であり,明らかな心不全徴候はなく経過した.妊娠37週4日帝王切開にて分娩となり,児は2960g,女児,Apger score(1/5)8点/8点であった.出生時より心室収縮は40bpm台後半であり,イソプロテレノール投与で心拍数上昇を行い経過を見ていた.心不全症状の進行を認めたため日齢6日に緊急ペースメーカー植え込み術を施行し,術後経過は良好である.<考察>以前に我々は,胎児房室ブロック発症予防に経母体的なステロイド投与および血漿交換の有用性を報告している.しかし,今回の症例では母体基礎疾患がないために経母体的な加療は選択出来ず,塩酸リトドリンの投与のみで経過観察とした.特発性胎児完全房室ブロックの発症予防方法や妊娠中の加療については今後も検討が必要である.


関東連合産科婦人科学会誌, 48(2) 207-207, 2011


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