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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
50年前のSU薬による周産期死亡の原因は動脈管閉鎖が原因か
門間 美佳, 井上 裕美
湘南鎌倉総合病院産婦人科
背景:第一世代のスルホニル尿素(SU)(トルブタミド,クロルプロパミド)は50年前に妊娠糖尿病に用いられ,原因不明の周産期死亡を高率に生じた.SUはKATPチャネルを閉鎖してインスリンを分泌する.動脈のKATPチャネルもSUで閉鎖して動脈は収縮する.グリベンクラミドはin―vitroの実験で動脈管を収縮する.SUの胎盤通過性はトルブタミド,クロルプロパミドで高く,グリベンクラミドではほとんどない.目的;SU薬の経口投与群の胎生期動脈管収縮をラットモデルで解明すること方法;妊娠21日(満期)のWistarラットにSU薬を胃内注入し,2,4,8,24 時間後に親の頸椎脱臼,帝王切開,仔の全身急速凍結,凍結ミクロトームにより動脈管内径を測定した.結果;トルブタミドとクロルプロパミドは速やかに投与量依存性に動脈管を収縮した.トルブタミドの臨床量の投与後,動脈管内径は投与前の0.8-0.5 となった.この10 倍量を投与すると動脈管はほぼ閉鎖した.グリベンクラミドは大量投与にても動脈管の収縮を認めず,48 時間に3 回大量投与することによりわずかに収縮し内径は0.7 になった.グルメピリドは大量投与後4 時間でわずかに収縮し内径は0.85 になった.結論;第一世代のスルホニル尿素(SU)(トルブタミド,クロルプロパミド)は臨床的に用いる量で胎生期動脈管の中等度の収縮を生じた.この10倍量では動脈管は完全に閉鎖した.50 年前のSU 剤使用者の高率の周産期死亡の原因はSU による動脈管閉鎖ではないかと推察される.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
207-207, 2011
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