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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
卵巣奇形腫の切除が有効であった自己免疫性辺縁系脳炎の一症例
原 典子, 平井 光男, 小川 恵吾, 大内 秀高, 海部 真美子
市立甲府病院産婦人科
近年,若年女性に発症する急性非ヘルペス性辺縁系脳炎の1つとして,自己抗体産生により発症する自己免疫性辺縁系脳炎が明らかとなり注目されている.今回我々は,早期の卵巣腫瘍摘出と免疫療法により比較的短期間に著明な改善を認めた抗グルタミン酸受容体抗体陽性の自己免疫性辺縁系脳炎の1症例を経験した.症例は28歳1経妊1経産,家族歴,既往歴にて特記事項なし.200X年Y月4日,感冒様症状を認め,同月5日異常行動があり,その後突然の痙攣発作と高度の意識障害を認めたため当院救急受診となり,人工呼吸管理下に入院加療が開始された.入院時の髄液検査,頭部CT,各種ウイルス検査より非ヘルペス性辺縁系脳炎を考え,第10病日骨盤部画像診断にて約15mm大の両側卵巣奇形腫の合併が判明した.卵巣奇形腫に随伴した辺縁系脳炎を強く疑い,第15病日に右付属器切除術及び左卵巣嚢腫核出術を施行した.一部に中枢神経組織を有する成熟奇形腫であった.術後6―7週から会話可能となり,神経学的所見及び全身状態の改善を認めた.その後も順調に臨床症状は改善し,脳炎発症から約4ヵ月後にリハビリ目的に転院となった.発症から約1年後には,入院前の日常生活をほぼ送れるようになっている.本疾患の詳しい病態は現在研究段階だが,卵巣奇形腫に対する母体の排除反応の自己感作で生じていると考えられている.そのため,全身状態が落ち着けば高度の意識障害が遷延している状況であっても早期の卵巣奇形腫摘出を行うことは有益で,患者の予後改善や罹患期間の短縮の一因になりうると考える.本症例の詳細と共に,文献的考察をまじえて報告する.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
213-213, 2011
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