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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
卵巣奇形腫関連傍腫瘍性脳炎症例に対する婦人科の対応
中澤 明里, 神尊 貴裕, 古村 絢子, 中村 泰昭, 落合 尚美, 中川 圭介, 矢部 慎一郎, 五十嵐 敏雄, 梁 善光
帝京大学ちば総合医療センター産婦人科
卵巣奇形腫関連傍腫瘍性脳炎は2007年Dalmauらにより提唱された新しい疾患概念であり,卵巣奇形腫に発現したグルタミン酸受容体の一つNMDARのNR1/NR2 heteromersに対する抗体が血液や脊髄液中に産生され,急性脳炎を発症する.急性脳炎の7.6%にこのNMDAR脳炎が存在し,神経内科領域のトピックになっている.今後は婦人科への手術依頼が増加すると予想されるが,4ヶ月以内の早期卵巣奇形腫摘出が病態及び予後改善に重要であるとの報告があることから手術を打診される段階では抗体の存在が不明で,確定診断に至っていないこと多い.今回,我々は症例経験と文献から,婦人科としての対応についてまとめた.症例は24歳,1G1P.発熱,人格障害,進行性の意識障害を認め,第8病日に当院神経内科に入院.脊髄液中ヘルペス属PCR陰性であったことから,当疾患を疑い骨盤MRIを施行.3cm大の左卵巣奇形腫を認め,第16病日に当科コンサルトとなった.患者は高度の意識障害(JCS III 100―300)を認め,抗痙攣薬を予防投与の上,気管内挿管中であった.病巣摘出による改善を期待し第21病日に腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術を施行,病理はImmature teratoma, grade Iで,術後は著明な意識レベル改善を認め,3ヶ月で退院となったが,未熟奇形腫に対して腹腔鏡下付属器切除を追加予定である.術前の脊髄液から抗NMDAR抗体陽性の報告から確定診断に至ったのは術後1.5ヶ月であった.本疾患では本症例のように24%に未熟奇形腫の報告があり,対応としては早期腹腔鏡下付属器切除が適切であると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
214-214, 2011
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