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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
Paraneoplastic neurological syndromeで発症した腹膜癌の1例
竹内 真, 齋藤 泉, 有本 貴英, 松本 陽子, 織田 克利, 川名 敬, 中川 俊介, 大須賀 穣, 矢野 哲, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学医学部附属病院産婦人科
【緒言】Paraneoplastic neurological syndrome(傍腫瘍性神経症候群)は悪性腫瘍に伴い様々な神経症状を呈する稀な症候群である.今回我々は小脳失調を契機として腹膜癌が発見された症例を経験したので報告する.【症例】77歳 2経妊2経産,2010年6月めまい・ふらつき・嘔気・嘔吐が出現,次いで構音障害,首を前後に振る不随意運動が出現.四肢・体幹失調により歩行・書字も不可能となった.小脳炎が疑われ前医で経過観察されていたが症状が増悪,頭部MRI上小脳の萎縮を認め,11月2日当院神経内科紹介入院.髄液検査でIgG index高値,抗神経抗体検索で婦人科腫瘍に伴う小脳変性症に関与する抗Yo抗体が陽性であり,婦人科領域の悪性腫瘍の合併が疑われた.腫瘍マーカーは正常だったが,画像検査で子宮頸部背側に悪性を疑う腫瘍を認め当科転科.卵巣癌を疑い診断・治療目的に12月9日腹式単純子宮全摘術+両側付属器切除術+大網部分切除術を施行.肉眼的に完全切除を行った.病理組織診断にて腟左背側,直腸左側の腹膜,右卵管采の上皮内にhigh grade serous adenocarcinomaを認め腹膜癌と診断.術後療法としてTC療法6コースの方針とした.腫瘍自体の治療がCRの場合,免疫療法の組み合わせにより神経予後の改善が期待できるため,現在化学療法に加え大量免疫グロブリン療法を施行中.術後11週経過した現時点で神経症状の増悪を認めていない.【結語】婦人科腫瘍に小脳失調を合併した症例では,抗神経抗体の存在を念頭に置く必要がある.抗神経抗体陽性の小脳失調を呈する婦人科腫瘍症例において,CRを達成できる見込みのある場合には,神経予後の観点からも積極的に手術・化学療法を行うことが望ましい.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
220-220, 2011
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