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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
塩化カリウム局所注入およびメソトレキセート全身投与が奏功したダグラス窩腹膜妊娠の1例
今西 俊明, 近藤 沙織, 橘 涼太, 鹿島 大靖, 宮本 強, 岡 賢二, 堀内 晶子, 塩沢 丹里
信州大学医学部産婦人科
腹膜妊娠は子宮外妊娠の1.4%と非常に稀な疾患であり,週数や妊娠部位により,手術療法,動脈塞栓術,薬物療法の報告がある.今回,妊娠8週相当のダグラス窩腹膜妊娠に対し,塩化カリウム(KCL)局所注入及びメソトレキセート(MTX)全身投与を行った症例を経験したので報告する.症例は31歳の女性で,1回経妊0回経産.無月経7週6日,近医産婦人科を受診し,尿中hCGは陽性であったが子宮内に胎嚢を認めなかった.無月経8週4日,ダグラス窩に胎嚢と児心拍を伴う胎児を認めたため子宮外妊娠を疑われ,当科を紹介受診した.初診時,血中hCGは62500U/mlであり,子宮内に胎嚢,胎児を認めず,ダグラス窩に3cmの腫瘤が存在し内部には児心拍を伴う頭殿長16.7mmの胎児(8週4日相当)を認めた.腫瘤は両側付属器と離れてダグラス窩腹膜上に存在し,ダグラス窩腹膜妊娠と診断した.腫瘤は子宮と直腸と接しており,手術療法は子宮,直腸に損傷が及ぶ危険があると考えられたため,保存的治療を行う方針とした.無月経8週0日,経腟超音波ガイド下にKCLを局所注入し,MTX50mg/kgを筋注した.合併症を認めず1週間後に退院し,以降は外来経過観察を行った.血中hCGの減少とともに腫瘤は縮小し,術後2ヶ月半でhCGは陰性化した.その後自然妊娠成立,妊娠経過に問題無く,経腟分娩に至った.ダグラス窩腹膜妊娠に対するKCL局所注入,MTX全身投与は,手術療法に比べ安全性が高く,短期間の入院及び外来での経過観察が可能であり,有用な治療法と考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
223-223, 2011
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