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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
両側卵巣腫大をきたし,臨床的侵入奇胎を続発した胎児共存胞状奇胎の一例
北脇 佳美, 齋藤 和毅, 布施 由紀子, 吉田 卓功, 石山 俊輔, 青木 早苗, 加藤 理恵子, 高嶺 智子, 関口 将軌, 桃原 祥人, 宮坂 尚幸, 久保田 俊郎
東京医科歯科大学医学部附属病院周産・女性診療科
嚢胞化絨毛と胎児とを同時に認める病態としては部分胞状奇胎が最も多いが,まれに双胎妊娠の妊卵の一つが胞状奇胎となった胎児共存全奇胎も見られる.今回我々は,両側卵巣腫大をきたし,奇胎娩出後に臨床的侵入奇胎を続発した胎児共存全奇胎の一例を経験したので報告する.症例は29歳,未経妊.クロミフェンによる排卵誘発後に妊娠し,妊娠9週に絨毛膜下血腫を指摘された.14週より不正性器出血が出現し,超音波断層法にて絨毛膜下血腫の増大と胞状奇胎様所見を認め,妊娠15週0日に精査目的で当科紹介となった.超音波断層法・MRIで子宮内に正常胎児・胎盤およびmultivesicular patternを呈するmassを認め,両側卵巣は多嚢胞性の腫大を認めた.血中hCGは>150万IU/Lであった.以上から胎児共存全奇胎および多発性黄体化卵胞嚢胞と診断した.妊娠16週3日に子宮内容清掃術を施行し,肉眼的には正常胎児・胎盤および胞状奇胎を認めた.1週間後に再度子宮内容清掃術を施行した.染色体検査は正常胎盤部分:46, XY,胞状奇胎部分:46, XXであり,肉眼所見・病理組織診断と併せて胎児共存全奇胎と確定診断した.2回目の子宮内容清掃術翌日には血中hCGは19,270 IU/Lまで低下を認めたが,術後5週の時点で2,249 IU/Lで経過はhCGの非順調型であった.また両側卵巣の増大を認め,造影CT・MRIにて右肺転移と子宮筋層内浸潤が疑われた.絨毛癌診断スコア 0点であり臨床的侵入奇胎および転移性奇胎と診断した.奇胎娩出後39日目より化学療法を開始し,現在治療継続中である.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
228-228, 2011
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