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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
クローン病合併直腸腟瘻孔部癌の一例
永田 亮, 宮城 悦子, 丸山 康世, 井畑 穰, 助川 明子, 佐藤 美紀子, 沼崎 令子, 杉浦 賢, 平原 史樹
横浜市立大学附属病院産婦人科
クローン病患者の直腸腟瘻の合併は時に見られるが,癌合併の報告は少ない.今回我々は,直腸腟瘻に合併したと考えられる瘻孔癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は39歳,2経妊2経産.19歳でクローン病を発症し,増悪・寛解を繰り返していた.1年前より,水溶性の帯下が増加.時に血が混ざることあり.また,腟から空気がもれる感じが出現し,近医受診ののち,当科紹介受診となる.診察上,左腟口〜腟に乳頭状の1.5cm大の腫瘍認めた.組織診断にて腺癌であり,免疫染色上大腸原発として矛盾しない所見であった.下部消化管内視鏡・生検にて腫瘍性病変認めなかったが,MRIにて明らかな直腸腟瘻認めたことから,瘻孔癌と診断し,当院消化器外科にて,後方骨盤内臓全摘術を施行した.肉眼上・病理組織検査上も瘻孔部の腸管粘膜側には悪性所見は認めなかった.免疫染色を踏まえ,最終診断は大腸由来の瘻孔癌となる.現在術後1年,再発兆候なく経過している.文献上,クローン病の瘻孔部癌の報告は非常に少なく,1983年から2005年までに本邦では2例の症例報告のみであった.症状としては,腟からの出血と排膿,会陰部痛の増悪があるとされる.クローン病女性における直腸腟瘻の発癌は極めてまれではあるが,長期にわたる無症状瘻孔に何らかの症状が出現した際は,癌化の可能性を含めて慎重な経過観察が必要である.これまでの報告でも,癌診断時は病期が進んでいることが多く,予後不良である.一方で,複雑な瘻孔や狭窄・疼痛があると,しばしば十分な診察ができない.場合によっては,麻酔下での瘻孔部生検や掻爬が望まれる.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
235-235, 2011
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