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第121回学術集会(平成23年6月12日(日))
【一般演題】
緊急帝王切開術後に産科DICで発症した臨床的羊水塞栓症の一例
栗本 ちえ子, 碓井 宏和, 鈴木 義也, 山地 沙知, 井上 万里子, 田中 宏一, 尾本 暁子, 生水 真紀夫
千葉大学医学部附属病院周産期母性科
【諸言】羊水塞栓症の死亡率は20〜90%と高いが,母児共に救命し得た本症を経験したので報告する.【症例】26歳のてんかん及び高血圧合併妊婦(0妊0産).血圧上昇のため38週0日に,硬膜外麻酔下に内圧計と頭皮モニターを装着してオキシトシンによる分娩誘発を開始した.変動一過性徐脈に対し羊水注入を行った.その120分後,突然強い腹痛を訴えた.遷延徐脈も出現したため,緊急帝王切開術を施行し20分後に児を娩出させた.臍帯動脈血はpH 7.029,BE は−12.0 で,アプガールスコアは4/9 点であった.胎児娩出後に母体のSpO 2 及び血圧の低下,心拍数の上昇が認められた.終刀前後より,創部および子宮からの強出血が出現した.臨床的羊水塞栓にともなうDICと判断し,輸血とガベキサートメシル酸塩,ATIII,ウリナスタチンの投与を開始した(総出血量:約6000 g;輸血量:MAP 20 U,FFP 30 U,Plt 10 U). 治療開始時, フィブリノーゲンは測定感度以下, FDP は1134.6 であった.約4 時間後に,DIC 症状が改善し止血が得られるようになった.その後特に合併症なく経過し,産褥15 日目に退院した.【結論】本症例は,分娩誘発・羊水注入・過強陣痛・帝王切開など複数の羊水塞栓のリスク因子を有している.経過から分娩誘発中に羊水の流入が発生したものと思われるが,帝切時の発生も否定できない.産科DIC では速やかな大量輸血と集学的治療が有効であることを再認識させられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(2)
237-237, 2011
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