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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【教育セミナー1】
FPFD診療のリニューアル
中田 真木
三井記念病院産婦人科
ここ数年,産婦人科と泌尿器科で,女性骨盤底障害(FPFD)の手術は増えている.対象となる疾患は,主に子宮腟脱(POP)と腹圧性尿失禁(SUI)である.
外来診療の規模や位置づけ,性格からみて,産婦人科と泌尿器科には少なからぬ違いがある.泌尿器科にFPFD専門外来が今後も増えるとしても,FPFDの一次診療の主要な部分はやはり,女性への固有のケアを提供する産婦人科に残ることになると私は予測している.
産婦人科における過去のFPFD診療(主にPOP診療)は残念ながらあまり効率的でなかった.このことについて,反省すべき点は多々ある.今後のために,《FPFD診療は身体医学》と《客観的な情報を共有》を中心に検討しよう.
《FPFD診療は身体医学》産婦人科では,FPFDは更年期障害と同様のスタンスで迎えられることが多い.そこでは,患者の満足度が重要視されがちだ.しかし,患者目線ということは果たして正しいのだろうか?
確かに,FPFDの受診者はしばしば孤独に問題を抱えこみ,心理ストレスに疲弊している.しかしFPFDは身体疾患で,問題の核心は身体的不具合である.受診者の心理ストレスにつきあうことはFPFDの場合,問題の解決に結びつかない.
産婦人科の一次診療でも,外科治療を含めたFPFDのマネジメントを見通すことが理想だ.手術治療の有用性や限界,入院や療養の日数など実施周辺の状況について,知識をリニューアルしよう.
《客観的な情報を共有》ひとくちにPOPやSUIと言っても,支持不全の様態や程度,その他の条件などにより,症状,経過,予後はさまざまである.当然,症例によって,適切な治療や管理にはかなりの幅が出てくる.どの疾患もそうであろうが,FPFDに適切な医学的対応を行なうためには,病態の評価や理解を今までよりも客観化することが必要だ.これによって,施設内での情報共有も行ないやすくなり,患者が特定の医師に依存しやすい現状を打開できる.
このテーマについて,ここ数年見直されているのが,診察台での超音波検査である.臓器のアライメントや尿路の形態評価に,排出障害の観察に支持不全箇所の確認にと,多彩な用途がある.しかも,超音波検査はほとんどどこの産婦人科でも使用が可能で,信頼性の高い客観的な医療情報を与える.一次診療においても,骨盤底の超音波検査を十分に活用することが望まれる.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
270-270, 2011
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