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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【教育セミナー3】
産婦人科腹腔鏡手術の魅力について
―これから始められる先生方へのメッセージも含めて―
伊熊 健一郎
健康保険組合連合会大阪中央病院婦人科
[背景]腹腔鏡の普及のきっかけは1980年前後の体外受精の採卵に始まる.しかし,当初は術者だけの情報であったものが,1985年頃のCCDによる情報の共有化と機器や器具類の開発とがあいまって,1990年頃の腹腔鏡下胆嚢摘出術が生まれた.以降,20数年の腹腔鏡手術には目を見張るものがある.その経緯は,できる症例に始まり,(1)手法や術式の工夫や改良,(2)手技の向上や周辺機器の開発による適応拡大,(3)若手医師の育成などから,標準術式へと成熟してきた.そのような背景の下,手術支援用ロボット:da Vinci,経管腔的内視鏡手術:NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery),単孔手術:TANKOなど,全く概念を新たにした手術方法なども生まれてきている.勿論,手術創が目立たなく,手術侵襲が少ない以外に,従来法に匹敵するかそれ以上の手術内容であることが必要となる.腹腔鏡ですれば良いというものではない.また,婦人科医師に求められるものは,常に妊孕能を維持し,改善につながる治療内容が求められる.当然であるが,“何を目的とし,どのような方法で,どのような内容の手術をするか”に心がけておく必要があると考える.
[腹腔鏡手術]腹腔鏡手術では,術者と同じ内容の情報を立ち会う全員が共有でき,情報の同時伝送や,記録した画像の再生なども可能である.このことにより,手術の安全性の確保につながり,患者や家族への説明,遠隔支援などにも使われている.また,遠隔操縦による手術支援や教育的な研修などへの展開もある.これらの内容を上手く活用することにより,手術内容の再現による内容の検証や,術式や手法の標準化という普及にもつながり,若手医師への指導や育成にも極めて有用な教材となっている.
[提示する手術内容]本学会では,先ず,これまでの腹腔鏡手術で実際に集積してきたトラブルシューティグの内容を共有していただき,腹腔鏡手術の特有の注意点や,スキルの必要性を知って頂きたい.また,女性のQOLを著しく損なう子宮内膜症を中心とした手術内容を供覧しながら,これまで編み出した臓器に対する愛護的な手技や手法による術式や手術内容などについても触れたい.その術前の評価には,VAS-:Visual analogue sacalによる術前の患者自身の評価,腟・直腸診による痛みや硬結などの病状の評価,画像からMRIゼリー法による深部病変や直腸病変や癒着などの評価,それらの再評価により手術内容を検討する.手術に際しては,どのような手法と手技で,どのようなパワーソースで,どのような術式を,どのように進めるかを決める.手術により妊孕能が改善される内容の提供に心がけている.今回は,これらの内容についてビデオ映像を通して紹介したい.若い先生方,これから始めようと思われる先生方への参考になる事を願っております.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
272-272, 2011
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