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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【ワークショップ1】
妊娠糖尿病(GDM),妊娠時に診断された
明らかな糖尿病,ならびに糖尿病(DM)
合併妊婦の管理・分娩は?
正岡 直樹
東京女子医科大学八千代医療センター母体胎児科・婦人科
近年の糖尿病患者数の増加は明らかな現象であるが,その中でII型糖尿病は遺伝的素因が基本にあり,後天的な要因である運動不足,高脂肪食による肥満やストレス,加齢などが加わることにより,インスリン作用障害が生じ,糖尿病を惹起するものと考えられる.従って産科領域においては,高年妊娠の増加と相まって今後,糖代謝異常妊婦の増加が予想される.
一方,我が国では1985年に日本産科婦人科学会から妊娠糖尿病の診断基準が発表され,長らく臨床の場で用いられてきたが,欧米にも別の診断基準が存在しており,国際学会での討論の場において支障を生じることも少なくなかった.そこで,これらの統一を目的としてInternational Association of Diabetes and Pregnancy Study Group(IADPSG)がHyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcome(HAPO)studyをもとに妊娠の帰結(LGA,児の高体脂肪率,臍帯血C-ペプチド高値)から新しい診断基準を発表した.それに伴い,我が国においても新しい診断基準が2010年7月から使用が開始された.新基準では妊娠中に発見される耐糖能異常は@妊娠糖尿病,A妊娠時に診断されたあきらかな糖尿病の2つに分類される.「妊娠糖尿病」は,「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である.妊娠時に診断されたあきらかな糖尿病は含めない」と定義され,75gOGTTで空腹時血糖値≧92mg/dl(5.1 mmol/l),負荷後1時間値≧180mg/dl(10.0 mmol/l),負荷後2時間値≧153mg/dl(8.5 mmol/l)の1点以上満たした場合に診断する.大きな変更点としては,旧診断基準では負荷前値,負荷後60分後,120分値の2点以上異常値を示したものを妊娠糖尿病としていたが,今回の改訂では1点でも異常を示す場合を妊娠糖尿病とした.その結果,今後の妊娠糖尿病と診断される頻度は約4倍にもなると考えられている.また「妊娠時に診断されたあきらかな糖尿病:overt diabetes in pregnancy」の診断は以下の4項目のいずれかを満たした場合に診断される.@空腹時血糖≧126 mg/dl,AHbA1c≧6.5%[HbA1c(JDS)],B確実な糖尿病性網膜症が存在する場合,C随時血糖≧200 mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200 mg/dlの場合(いずれの場合も空腹時血糖はHbA1cで確認する).
糖代謝異常合併妊娠においては厳重な血糖管理が必要であることは言を俟たない.HAPO studyでも血糖値と母体・周産期合併症(帝王切開,新生児低血糖,早産,肩甲難産あるいは分娩損傷,NICU管理,黄疸,preeclampsia)の間に相関のあることが示されている.本講演では糖代謝異常妊婦の診断および管理の実際について述べる.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
280-280, 2011
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