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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【ワークショップ3】
再発卵巣がん治療(6か月未満再発)について
野村 弘行
慶應義塾大学医学部産婦人科
上皮性卵巣癌においては初回化学療法不応例および初回化学療法終了後から再発までの期間(disease-free interval-:DFI)が6か月未満の再発はプラチナ製剤抵抗性と判断され,初回治療と交差耐性のない薬剤による単剤化学療法が選択される.NCCNガイドラインでプラチナ抵抗性症例に対してpreferred agentsとされているゲムシタビン,リポソーム化ドキソルビシン,トポテカンは,近年,本邦においても「がん化学療法後に増悪した卵巣癌」が効能追加となり,再発卵巣癌の治療選択肢が大きく増加した.
プラチナ抵抗性症例を含む再発卵巣癌の化学療法に関しては,これまで第II相試験において,リポソーム化ドキソルビシン,パクリタキセル,ゲムシタビン,トポテカン,ドセタキセル,エトポシド内服,ベバシズマブ等の有効性が報告されている.従来本邦で多用されてきたイリノテカンについても,自験例による後方視的検討で上記薬剤と同等の臨床効果を示した.第III相比較試験ではリポソーム化ドキソルビシン,パクリタキセル,ゲムシタビン,トポテカンが使用され複数実施されているが,primary endpointにおいて互いに優越性を証明できた薬剤はない.
以上の報告を概観してみると,試験デザインや症例の背景等に違いはみられるものの,どの薬剤も奏効率は5〜20%,PFSの中央値は2〜3か月程度,生存期間中央値は10か月程度とほぼ同等である.このことは,プラチナ抵抗性症例を対象とした第III相試験において優越性を証明する試験デザインの構築が困難であることを意味し,実臨床における薬物療法の選択をランダム化第III相比較試験の結果のみに基づくことが難しいといえる.よって,エビデンスレベルを知った上で,第II相試験や後方視的研究の結果も適切に臨床に当てはめていくことも肝要である.
3rd line化学療法ではレジメン選択や臨床的ベネフィットについては不明な点が多いが,自験例の検討では2nd line化学療法からのDFIが独立した予後因子であり,その期間は3か月程度であった.
卵巣癌の治療成績向上のためには,新規抗癌剤や分子標的薬の開発が急務であり,新たな臨床試験の立案や積極的な参加が必要である.プラチナ抵抗性再発卵巣癌を対象とした多施設共同研究としてはJGOG3018(第III相;リポソーム化ドキソルビシン50mg/m<sup>2</sup> vs 40mg/m<sup>2</sup>)やJCOG0503(第II相;エトポシド経口+イリノテカン)が展開されており,当院においてもイリノテカン+リポソーム化ドキソルビシン併用療法第I相試験を実施している.一方で,再発卵巣癌の治療の限界を認識し,抗がん治療に固執せず緩和医療を実践する臨床医としての裁量も求められる.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
290-290, 2011
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