|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
αサラセミアによる胎児水腫の一例
川田 亜公子, 高木 剛, 京谷 琢治, 矢木 さやか
群馬県立小児医療センター産科
胎児水腫の原因は,免疫性と非免疫性に大別されるが,特に非免疫性胎児水腫の原因は多岐にわたり,原因が不明なまま子宮内胎児死亡や新生児死亡に至る例も少なくない.今回,我々は,αサラセミアによる胎児水腫を来した一例を経験したので報告する.症例は19歳,ベトナム人.未経妊未経産.自然妊娠成立し,近医で妊婦健診を施行していた.妊娠27週の妊婦健診にて,突然の胎児水腫と羊水過少を呈し,当院へ紹介となった.初診時の超音波所見では,胎児は著明な腹水と心拡大を呈し,明らかな胎盤肥厚を認めた.MCA-PSV 73.21cm/s(2.07MoM)と著明な上昇を認め,胎児貧血が疑われた.母体感染症検査では,TORCH・パルボは陰性であった.妊娠28週の健診で,母体血圧の上昇と,下肢浮腫および尿蛋白が出現.胸部レントゲン上胸水貯留を認め,ミラー症候群と考えられた為入院とした.妊娠29週1日,前期破水.その後,自然陣痛発来し,妊娠29週3日,経腟分娩にて1802g,Apgar2-2-2の男児を出産した.児は出生時よりHb 4.3g/dlと高度の貧血と鉄過剰を認めた.クームス試験は陰性であり,血液像では,標的赤血球が散見された.交換輸血による治療などを行ったが,日齢10に多臓器不全により新生児死亡となった.精査の結果,児はαサラセミアと診断され,これによる胎児水腫を呈していたものと考えられた.αサラセミアは,日本では非常に稀な疾患である.しかし,外国人妊婦の増加に伴い,貧血による胎児水腫の鑑別診断としての重要性が増してくる可能性があると思われた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
298-298, 2011
|