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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
悪性腹膜中皮腫と鑑別が困難な卵巣境界悪性漿液性腫瘍の一例
梶山 明日香, 寺本 勝寛, 坂本 育子, 白石 眞貴, 池上 淳, 薬袋 牧子, 須波 玲, 内田 雄三, 永井 聖一郎
山梨県立中央病院産婦人科
【緒言】腹膜発生の悪性中皮腫は報告が少ない.今回,悪性腹膜中皮腫と鑑別に苦慮する卵巣境界悪性腫瘍の症例を経験したので報告する.
【症例】46歳 2経妊2経産.現病歴:人間ドックで骨盤内の腹水貯留と腫瘍マーカーの上昇(CA19-9 154.2U/ml,CA125 51.2U/ml)を指摘された.消化管を含め精査を行ったが異常を認めず,CT検査にて両側付属器が造影剤でやや増強されたため,婦人科疾患の精査目的に当院紹介来院した.MRI検査を行ったが,子宮と両側付属器は異常を認めず,少量の腹水貯留の所見のみであった.ダグラス窩穿刺では腹水細胞診でclassV,adenocarcinomaの診断であり,腹膜癌を疑った.細胞診標本の免疫組織化学ではCEA陰性,カルレチニン陽性であり,中皮腫に合致する結果であった.悪性腹膜中皮腫,腹膜癌,卵巣癌の鑑別診断のため,腹腔鏡下に生検を行ったところ,左右卵巣,腹膜表面に乳頭状に発育する腫瘍を認めた.病理検査では悪性腹膜中皮腫と卵巣境界悪性腫瘍の合併例と診断した.その後,単純子宮全摘術,両側付属器摘出術,大網切除術,腹膜播種巣切除術を施行した.膀胱子宮窩,ダグラス窩に5mm前後の播種巣を無数に認め,両側付属器に乳頭状の腫瘍を認めた.当院の病理検査では免疫組織化学の結果を含め悪性中皮腫を疑ったが,国立がんセンターに鑑別診断を依頼したところ卵巣境界悪性漿液性腫瘍の診断であった.
【考察】腹水貯留から一年が経過し進行が緩徐であり,免疫組織化学からも卵巣境界悪性漿液性腫瘍と診断したが,治療反応性や臨床経過から,今後も検討が必要と考えた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
309-309, 2011
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