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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
妊娠中に急性呼吸窮迫症候群をきたした一例
中原 万里子, 田嶋 敦, 笠原 華子, 濱村 憲佑, 矢田 昌太郎, 上山 和也, 窪 麻由美, 白井 洋平, 鈴木 千賀子, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院産婦人科
<緒言>急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:以下ARDS)は,肺へのさまざまな種類の損傷によっておこり,レントゲン上の両側肺浸潤影とPaO2/FiO2≦200mmHgを特徴とする急性発症の低酸素性呼吸不全である.原因として,肺炎,誤嚥,敗血症等が挙げられる.今回我々は,妊娠中にARDSをきたした一例を経験したので報告する.<症例>31歳,0経妊0経産.自然妊娠成立後,近医で妊婦健診を行い,順調に経過していた.妊娠30週2日より発熱,咳嗽を認めたが改善せず,妊娠30週4日に入院.抗生剤で加療を行うも,呼吸苦が出現し,SpO2は90%と著明な低下をきたしたため,妊娠31週0日に当院へ母体搬送,緊急入院となった.胸部レントゲン上両側肺浸潤影を認め,リザーバーつきマスクでO215L/min投与下にPaO2 44mmHgであったため,ARDSの診断で人工呼吸器を装着した.原因検索を行ったが,インフルエンザ,マイコプラズマ,抗酸菌党の感染は否定的であった.抗生剤(EM,MEPM),ステロイドパルス療法,シべレスタットナトリウム200mg/日にて加療を行ったところ,徐々に全身状態の改善を認め,妊娠32週3日に人工呼吸器を離脱,妊娠34週5日退院となった.その後,妊娠40週5日に陣痛発来で入院,子宮口全開時にNRFSをきたし,鉗子分娩となった.出生した児は2888gの男児でApgar score 1分値8点/5分値9点,臍帯動脈血液ガスpHは7.305であった.母児ともに経過良好で産褥5日目に退院となった.<結語>今回,妊娠中にARDSをきたした一例を経験した.妊娠中期における発症であったが,集学的治療により母児ともに良好な経過をたどり妊娠継続も可能であった.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
326-326, 2011
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