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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
産褥4日目に発症した脳梗塞を契機に右内頚動脈高度狭窄を認めた広義もやもや病の一例
小林 織恵, 増永 彩, 菊池 友美, 藤田 裕, 大川 智実, 野木 才美, 勝手 恵理子, 北 直子, 梅澤 聡
武蔵野赤十字病院産婦人科
【緒言】もやもや病は両側の内頚動脈が狭窄もしくは閉塞することによって,側副血行路が発達した脳血管疾患で,30から40歳代の女性に多く,若年発症の脳梗塞,脳出血の原因となりうるため,産科医も注意するべき疾患の一つである.今回我々は産褥の脳梗塞を契機にもやもや病と診断された1例を経験した.【症例】39歳女性1経妊0経産.高血圧合併妊娠のため,15週に当院に紹介となった.自宅での血圧データから,白衣高血圧症と診断していたが,36週3日,自宅でも収縮期血圧が170台と上昇したため,重症妊娠高血圧症候群と診断し,翌36週4日帝王切開術を施行した.術後4日目に左上肢のしびれ,麻痺が出現し,造影CT・MRI施行.右運動野に脳虚血による梗塞像,陳旧性の多発脳梗塞を認めた.MRAにて右内頚動脈の高度狭窄を認めたため,広義のもやもや病と診断した.右半脳血流低下,萎縮もあり,詳細な問診を行ったところ,中学時代からある一過性の視野欠損や麻痺のエピソードが得られた.抗血小板薬,抗凝固剤等投与を開始,リハビリテーションを行いながら症状が安定したのを確認し,退院となった.【考察】本症例では内頚動脈の高度狭窄を基礎に,妊娠高血圧症候群による血圧の変動が脳梗塞をおこす原因となったと考えられた.本人の病識は薄く,医療側もhigh riskとの認識が低かった事から脳血管障害を未然に防ぐことは困難であったが,その後速やかに他科と協力し,現状の評価とともに症状コントロール,リハビリテーションの継続などへつなげることが出来た.産婦人科医は周産期の脳血管障害に対し,もやもや病の可能性も念頭に速やかな対応を行う必要がある.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
326-326, 2011
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