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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
Mタンパク遺伝子(emm)型が明らかとなった劇症分娩型A群レンサ球菌感染症の救命例
玉井 はるな, 小倉 剛, 竹島 絹子, 安部 加奈子, 小畠 真奈, 濱田 洋実, 吉川 裕之
筑波大学産婦人科
【はじめに】妊婦での劇症分娩型A群レンサ球菌感染症は母体致死率約60〜70%といわれ,一般成人の劇症型A群レンサ球菌(GAS)感染症の致死率(40%前後)と比べても予後が悪く,重篤な疾患である.近年,劇症型GASの遺伝子型を同定して重症化メカニズムを解明しようという試みがなされているが,妊婦での劇症分娩型GASの遺伝子型についての報告はない.今回我々は,救命し得た劇症分娩型A群レンサ球菌感染症でMタンパク遺伝子(emm)型が明らかとなった症例を経験したため文献的考察を加え報告する.【症例】39歳,3経妊2経産.妊娠38週1日,39℃台の発熱,全身倦怠感,嘔吐を伴う持続性の腹部緊満感及び腹痛を自覚.翌日外来受診,母体全身状態不良のため入院管理とした.入院時のCTGにてNRFSを認めたため緊急帝王切開施行し分娩とした.児は3057gの男児,APGAR 1分後1点,5分後3点,臍帯血pH 6.711,NICU管理となるも日齢4に死亡した.術中術後に各培養採取,ペニシリン系抗菌薬使用開始した.翌日には血液培養にてGASが検出された.術直後から血尿・無尿,心不全,DICとなり呼吸状態も悪化したため挿管管理となった.エンドトキシン吸着,24時間持続濾過透析を併用しつつ全身管理を行い術後62日に退院となった.【考察】今回救命し得たのは,初期よりGAS感染を疑って抗生剤を投与していたためと思われた.また,明らかとなったGASの遺伝子型であるemm1型は一般成人の劇症型GASに最もよく見られる型であった.今後さらなる症例の集積により,妊婦における劇症型GAS感染の病態解明が期待される.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
329-329, 2011
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