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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
臍腫瘍を契機に診断された成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化の一例
平山 貴士, 田嶋 敦, 笠原 華子, 長井 咲樹, 中原 万里子, 濱村 憲佑, 上山 和也, 窪 麻由美, 白井 洋平, 鈴木 千賀子, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院産婦人科
<緒言>成熟嚢胞性奇形腫は卵巣腫瘍のなかでも最も頻度が高く,全卵巣腫瘍の10〜20%と言われている.また,悪性転化は1-2%程度で認められ,悪性卵巣腫瘍の中でも稀な疾患である.一方,内臓悪性腫瘍の臍転移を総称してSister Mary Joseph’s nodule(以下SMJN)と言われており,予後不良の徴候として知られている.その頻度は内臓悪性腫瘍の転移全体の1〜2%と稀である.今回我々は,臍腫瘍を契機に診断された成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化の一例を経験したので報告する.<症例>63歳,2経妊2経産.22歳時に左成熟嚢胞性奇形腫に対して左付属器切除術を施行した.5年前より9cm大の右成熟嚢胞性奇形腫を認めており,放置されていた.今回,1か月前より臍腫瘍認め皮膚科で生検し,扁平上皮癌の結果であり,SMJNの原発巣検索目的で当科紹介受診.全身精査の結果,肺底部に単発性の腫瘤性病変と腹膜まで達する臍腫瘍,骨盤内に11cm大の成熟嚢胞性奇形腫を認めた.成熟嚢胞性奇形腫内には明らかな充実性部分は認めず,原発巣の確定診断も含めて手術の方針とした.術中迅速病理診断で右卵巣の扁平上皮癌であった.S状結腸や子宮後壁に播種性病変と思われる小腫瘤が散見されたため,根治術は行わず,腹式単純子宮全摘術,右付属器切除術,臍腫瘍切除術を施行した.<結語>成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化は化学療法,放射線療法ともに効果に乏しく予後は不良である.SMJNが疑われた場合には,原発巣の検索が重要であり,子宮・卵巣の頻度も少なくないため,当科としても原発巣となりうることを念頭において精査を行う必要があると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
354-354, 2011
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