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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
ARDSをきたした臨床的侵入奇胎の一例
秦 ひろか1, 大熊 克彰1, 横道 憲幸1, 渡部 真梨1, 鈴木 直2, 石塚 文平2
川崎市立多摩病院産婦人科1, 聖マリアンナ医科大学産婦人科2
今回,我々はARDSをきたした臨床的侵入奇胎という稀な一例を経験したので報告する.【症例】27歳,未経妊.既往歴:強迫神経症.婦人科通院歴なし.現病歴:不正出血を主訴に近医産科を受診し妊娠反応陽性であった.一方,数日前から感冒症状が増悪し,市中肺炎疑いで当院内科へ管理入院となった.妊娠管理目的で当科診療依頼あり,初診時の経腟超音波上,子宮内腔にvesicular patternを伴った肥厚を認め,胞状奇胎が強く疑われた.両側卵巣はOHSS様で7cm大に腫大.また12kgの急激な体重増加と下肢浮腫が著明であった.血中hCGは95万mIU/ml以上.同日咳嗽と呼吸困難感が増悪し,SpO2が低下.PaO2/FiO2≦200mgHg,また胸部X線写真で両側性の浸潤陰影をみとめARDS疑いで当院ICUにて挿管管理となった.胸部CTでも著明な肺水腫を認めた.翌日子宮内容物が自然排泄した.肉眼的に嚢胞状構造物を認め,部分胞状奇胎の病理診断であった.その後急激なhCGの減少を認め,翌週には全身状態が改善し,抜管後に再度子宮内容除去術施行.1週後にhCG再上昇をみとめ,存続絨毛症と診断した.骨盤MRIにて侵入奇胎をみとめるものの,CTにて遠隔転移はみとめず,絨毛癌診断スコア0点.臨床的侵入奇胎の診断で現在MTX療法施行中である.過去に絨毛癌肺転移によるARDS発症の報告はあるが,絨毛性疾患によるARDSの報告は少ない.今回のARDSの発症機序として,元々PCOSがあって奇胎妊娠が成立した結果,hCGが急上昇し血管透過性が異常亢進したために,OHSS,ひいてはARDSを発症したものと考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
365-365, 2011
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