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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
胎児母体間輸血症候群により重症貧血(Hb 1.9 g/dl)を呈し迅速な対応により良好な児の予後が得られた1例
伊藤 敏谷, 勝又 佳奈, 川合 健太, 岸本 彩子, 小田 智昭, 仲谷 美紗子, 下山 華, 内田 季之, 鈴木 一有, 杉原 一廣, 伊東 宏晃, 金山 尚裕
浜松医科大学産婦人科
【緒言】胎児母体間輸血症候群は明確な診断基準はないが,胎動減少,胎児心拍モニタリング異常などで緊急帝王切開となることが多く,子宮内胎児死亡の原因となり得る症候群である.【症例】26歳,B型Rh(+),3経妊0経産で2回の卵管妊娠の既往あり.体外受精にて妊娠成立し,当院で妊婦健診を行っていた.27週1日,胎動減少を主訴に受診.超音波,胎児心拍モニタリングにて異常なく帰宅となった.29週6日,再度胎動減少を自覚し,モニター上non-reassuringであり胎児機能不全と診断した.さらに,MCA-PSV 70cm/sと上昇を認めたことから,何らかの胎児貧血を伴う可能性を強く疑い,可及的速やかに緊急帝王切開術を施行した.新生児は1,450g,Apgar score 1/3の男児で皮膚蒼白であり,新生児血圧31/12 mmHg,鼻翼・陥没呼吸があった.分娩直後に臍帯血を検査しHb 1.9 g/dl,Ht 6.6%で著明な貧血を確認した.直ちに生理食塩水を急速投与し,O型赤血球を輸血し,新鮮凍結血漿,血小板を順次輸血し,AT製剤投与することで検査所見,並びに全身状態は改善していった.現在,児は生後50日,順調に経過している.母体血液所見はHbF 3.5%,血清AFP 41,098 ng/mlと高値を示した.以上より胎児母体間輸血症候群と診断した.【結論】本邦報告例と比較し,より妊娠早期で重症な新生児貧血を呈したが,迅速な集約的治療により全身状態良好となり生児を得た症例を経験した.胎動減少時には,胎児心拍モニタリングだけでなくMCA-PSVも行い本疾患も念頭において慎重に管理,対応する必要があると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
367-367, 2011
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