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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
帝王切開後の子癇発作との鑑別が困難であった腹横筋膜面(TAP)ブロックによる局所麻酔中毒が疑われた一例
和田 真沙美, 中島 義之, 田代 英史, 千葉 純子, 草西 多香子, 諸岡 雅子, 都築 陽欧子, 本田 能久, 坂井 昌人, 正岡 直樹
東京女子医科大学八千代医療センター母体胎児・婦人科
腹横筋膜面ブロック(TAP block)は,帝王切開などの術後の痛みを抑えるために有効であり,近年帝王切開時に併用する施設は増加している.今回我々は,重症妊娠高血圧腎症のため帝王切開術を行い,術後にTAP block施行した後に痙攣発作をおこした1例を経験したので報告する.
症例は28歳0回経妊0回経産の1型糖尿病合併妊婦.妊娠30週より高血圧と蛋白尿が出現し,妊娠32週に妊娠高血圧腎症のため当院へ母体搬送入院となった.入院後,切迫早産も認めたため,硫酸マグネシウムの持続静注を行い経過観察していたが,妊娠34週6日に母体の腎機能悪化のため緊急帝王切開術を施行し,3,416gの女児を分娩した.術後鎮痛目的に塩酸ロピバカインによるTAP blockを行った後,不穏状態となり痙攣発作を認めた.子癇発作を疑い,ジアゼパム投与,硫酸マグネシウム追加投与し,痙攣発作は消失した.痙攣発作前後の血圧は150/90mmHg前後であり,術後の頭部CT,MRIでは出血,梗塞やvasogenic edema等の異常所見は認めず,脳波にも異常は認めなかった.帝王切開術直後の血液検査で血清中ロピバカイン濃度962.2 ng/mLと高値であり,ロピバカインによる局所麻酔中毒が最も疑われた.
TAP blockは,局所麻酔薬の投与量が多いので,麻酔薬による全身毒性が発現する可能性があるため,妊娠高血圧症候群などのように意識障害を発症するリスクがある妊婦の帝王切開の場合,意識障害の原因として局所麻酔中毒も念頭におく必要がある.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
370-370, 2011
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