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第122回学術集会(平成23年10月30日(日))
【一般演題】
卵巣成熟嚢胞性奇形腫に合併した抗NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体脳炎の1例
岡野 奈々美, 黒崎 亮, 新澤 麗, 花岡 立也, 西川 忠暁, 大石 理恵, 堀 祐子, 岩佐 紀宏, 長谷川 幸清, 長尾 昌二, 藤原 恵一
埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科
【緒言】抗NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体脳炎は傍腫瘍性辺縁系脳炎であり,卵巣成熟嚢胞性奇形腫との関連が示唆されている.発症早期に卵巣腫瘍を摘出することで予後が良好になるとの報告もある.今回我々は,卵巣成熟嚢胞性奇形腫を合併した抗NMDA受容体脳炎を経験したので報告する.【症例】18歳,未婚,妊娠歴なし.頭痛と全身倦怠感を訴え近医受診したが,5日後には奇声を発する,急に暴れまわるなどの異常行動が出現したため,他院受診し統合失調症の診断で入院となった.入院4日目に強直間代性けいれんが見られたため,当院神経内科に転院となった.意識レベルはJCS3-100であり,ウイルス性脳炎の疑いで治療を開始するも改善が得られなかった.けいれんは,多くの抗けいれん薬に抵抗性であった.また,カルバマゼピンによる骨髄抑制から菌血症および真菌血症を併発し,治療に難渋した.転院後2カ月経過し,本症の可能性を考慮しMRI施行したところ,左卵巣に直径4cm大,右卵巣に直径1.5cm大の成熟嚢胞性奇形腫を認め,また,髄液中の抗NMDA受容体抗は陽性であった.転院4カ月で両側付属器切除術を行った.術後3カ月の時点では意識障害,けいれんは同程度で持続していたが,術後7カ月経過し,開眼するなど自発行動も徐々に見られるようになってきている.【考察】本症例では,診断するのに時間を要したことと,感染症のコントロールに難渋したことが腫瘍摘出まで長く経過した原因と考えられる.若年女性の非ウイルス性脳炎では本症を念頭に置いて卵巣腫瘍の検索を行い,卵巣奇形腫があれば,早期の腫瘍切除を考慮すべきである.
関東連合産科婦人科学会誌, 48(3)
377-377, 2011
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