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【原著】
当院における卵巣腫瘍破裂症例の検討
新橋 成直子, 田村 みどり, 五十嵐 豪, 石山 めぐみ, 津田 千春, 森川 香子, 近藤 春裕, 斎藤 寿一郎, 鈴木 直, 石塚 文平
聖マリアンナ医科大学産婦人科学教室
卵巣腫瘍破裂は急性腹症の一つであり,内膜症性嚢胞が多く,生殖期年齢の女性に好発する疾患でもあるため,卵巣機能の温存も重要である.しかし,画像所見上,嚢胞の形状が保たれていることもあり,その診断が難しいといわれている.今回,我々は良性の卵巣腫瘍破裂と診断し手術を施行した25症例について,臨床所見,術式,合併症,病理組織と手術までに要した時間について後方視的に検討を行った.患者平均年齢は31.5±8.0歳であった.25症例中,発症から手術までに要した時間が24時間未満であった群(A群)は11例,24時間以上要した群(B群)は14例であった.そのうち,付属器切除となった5例は全てB群であった.また組織別では内膜症性嚢胞が最も多く,次に成熟嚢胞奇形腫がみられた.術後合併症としては,腸閉塞,創部離開がみられた.内膜症性嚢胞は,その手術適応や時期について苦慮することが多く,保存的にみている例も多くある.しかし,内膜症性嚢胞は腫瘍壁が薄く,周囲臓器との癒着を起こし易いため,自然破裂の可能性がある.今回の検討では付属器切除となった5例のうち3例が内膜症性嚢胞であったが,すべてB群であり,手術までの時間を多く要したことから周囲臓器との癒着剥離が困難で付属器切除となっている.このことからも,画像所見において診断が難しい場合でも,臨床経過や臨床所見などと合わせて判断し,より迅速に手術を施行することが重要であると思われた.
Key words:endometriosis, rupture, ovarian cyst
関東連合産科婦人科学会誌, 48(4)
383-388, 2011
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