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【原著】
当院における過去10年間の卵管卵巣膿瘍62例に関する検討


朝田 嘉一, 大森 真紀子, 多賀谷 光, 和田 麻美子, 大木 麻喜, 深澤 宏子, 正田 朋子, 奈良 政敏, 笠井 剛, 端 晶彦, 平田 修司
山梨大学医学部産婦人科


 【目的】卵管卵巣膿瘍(tubo-ovarian abscess:TOA)は高度の骨盤内炎症性疾患であり,抗菌薬に抵抗性を示し,緊急手術を必要とする症例も多い.2000年1月から2010年6月までの約10年間に,当院で超音波検査,MRIあるいは開腹手術によりTOAと診断した62例について,その成因,背景を後方視的に検討した.【結果】年齢は14〜67歳(中央値40.5歳)で,30歳代と40歳代が全体の63%を占め,全例が性交経験者で,分娩歴のないものが25例(40%)あった.卵巣子宮内膜症性嚢胞が認められたものが30例(48%)あり,発症前に子宮内操作(子宮内膜細胞診9例,IUI 4例,腟式子宮筋腫摘出術1例,体外受精・胚移植1例)を行っていたり,IUD挿入中(2例)の症例が17例(27%)あった.開腹手術を必要としたのは46例(74%)で,他の16例は抗菌薬による保存的治療のみで軽快した.発症時にクラミジア抗原陽性は2例,膿瘍の細菌検査を行うことができた25例のうち14例が陽性で,α, βレンサ球菌,大腸菌,肺炎桿菌,バクテロイデスなどが検出された.【結論】TOAの発生に卵巣子宮内膜症性嚢胞の存在が関与している可能性が示唆された.内膜細胞診やIUIなどの子宮内操作を契機に発症した症例が多く,子宮内膜症性嚢胞を有する症例や,子宮内操作などの診療行為を行う際には,TOAを発症する可能性があることを念頭におく必要がある.

Key words:female genital tract, pelvic inflammatory disease, tubo-ovarian abscess, endometriosis, pathogenesis

関東連合産科婦人科学会誌, 48(4) 405-410, 2011


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