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【症例報告】
月経期における腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術後の多量性器出血に対し,子宮バルーンタンポナーデにより止血し得た1例
近藤 壯, 塩野入 規, 横井 由里子, 塩沢 功
波田総合病院
子宮筋腫核出術は月経終了後の卵胞期に行うことが望ましいが,やむを得ず月経期に行わなければならないこともある.今回,月経期に腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術を行った際に多量の性器出血を認めたが,子宮バルーンタンポナーデにより止血し得た1例を経験したので報告する.症例は,43歳,未婚,未経妊.Hb3.6 g/dlの高度貧血・過多月経にて紹介され,内膜を圧排する径9 cmの筋層内筋腫を認めた.GnRH agonist療法後,手術の方針としたが,患者は頻回に子宮出血を認めた.GnRH agonist療法を中止したところ手術2日前に月経発来した.手術延期も考慮したが,強い手術希望があり同意を得て腹腔鏡下手術を行った.子宮筋層は鬱血しており,子宮筋層を横切開したところ溢れるような静脈性の出血を認めたため,小開腹手術に移行した.腹腔内出血1,000 gと性器出血1,000 g以上を認めたため,メトロイリンテルを子宮内に留置したところ速やかな止血効果を得た.周産期領域・子宮鏡手術時の子宮バルーンタンポナーデによる止血の報告はあるが,これまで通常の手術での報告はない.月経期における子宮筋層への手術は,出血のリスクが高いため原則として回避すべきである.本症例のように何らかの事情でやむを得ず月経期に手術を行い,術後に多量の性器出血を認めた場合,子宮バルーンタンポナーデは簡便であるため,最初に試みる価値がある.しかしながら,子宮バルーンタンポナーデが有効でないことも想定し子宮動脈塞栓術や子宮摘出も考慮した対応,なによりも可能な限り月経期の手術を避ける工夫が望ましい.
Key words:uterine balloon tamponade, menstruation, myomectomy, uterin bleeding
関東連合産科婦人科学会誌, 48(4)
435-440, 2011
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