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【症例報告】
周産期死亡を来たし,分娩後に先天性白血病と診断された2例
山ノ井 康二, 笠井 靖代, 安藤 一道, 渡邊 理子, 中川 潤子, 山田 学, 木戸 道子, 石井 康夫, 杉本 充弘
日本赤十字社医療センター産婦人科
先天性白血病は稀な病気であり,その病態についてはまだ不明な部分も多い.今回我々は周産期死亡に至った先天性白血病の症例を2例経験したので報告する.症例1.28歳,0経妊0経産,自然妊娠.妊娠経過は順調であった.妊娠36週5日に胎動減少感を主訴に来院し,子宮内胎児死亡(Intrauterine fetal death;以下IUFD)を確認.その2日後に死産.外表奇形を認めず,臍帯や胎盤因子異常も認めなかった.喫煙歴や,高血圧といったIUFDのリスク因子もなく,臨床的にSudden intrauterine unexplained death(以下SIUD)の可能性も考え,剖検を依頼した.その結果,先天性白血病であることが判明し,IUFDの原因と考えられた.症例2.31歳,0経妊0経産,体外授精・胚盤胞移植法により妊娠.妊娠経過は順調であった.妊娠40週3日に胎児心拍モニターにて胎児機能不全と診断,帝王切開により分娩に至った.出生直後から大きな帽状腱膜下血腫,著しい貧血,白血球異常高値,出血傾向があった.精査の結果,日齢4で先天性白血病と診断,日齢5で死亡した.染色体検査で11q23領域にあるMixed lineage leukemia(以下MLL)遺伝子の転座を認めた.先天性白血病は稀ではあるが,特にMLL遺伝子異常の頻度が高いことが知られており,環境因子との関連性が研究されている.そして本症例のように,臨床的にSIUDと考えられる症例や早期新生児死亡の症例の中にも潜在している可能性がある.剖検を含め臍帯や胎盤の病理組織学的検査,染色体検査など,原因検索への努力が今後も重要である.
Key words:Perinatal death, Sudden intrauterine unexplained death, Congenitial leukemia, Autopsy, Non reassuring fetal status
関東連合産科婦人科学会誌, 49(1)
47-53, 2012
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