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【症例報告】
妊婦のHIV関連血小板減少症に対してHAART療法が奏功した1例


澁谷 剛志1), 松田 秀雄2), 川嶋 章弘1), 吉田 昌史1), 吉永 洋輔1), 浅井 一彦1), 渡邊 昭夫1), 宮本 守員1), 古谷 健一1)
防衛医科大学校産婦人科1), 松田母子クリニック2)


 HCV感染症,H. Pyrori感染,HIV感染などの感染症によって免疫学的機序で血小板が減少することがある.これらの血小板減少症に対しては原疾患の治療を行うことでの改善もしくは寛解を得ることが多い.今回我々はHIV感染妊婦における血小板減少症に対し,Highly Active Anti-Retroviral therapy(HAART)療法が奏効した1例を経験したので報告する.症例は32歳,7経妊4経産,妊娠27週でHIV抗体陽性,血小板減少を認めた.受診時HIV-1 RNA 1.1×104 copy/ml, CD4 311/μl,血小板数6.9×104lであった.前回妊娠時にはHIV抗体陰性であり,今回の妊娠で初めてHIV感染が判明した.他の感染症は認めなかった.妊娠28週よりHAART療法(AZT:zidovudine 400 mg, 3TC:lamivudine 300 mg, LPV/r:lopinavir/ritonavir 800 mg)を開始した.妊娠30週にはHIV-1 RNA 270 copy/ml, CD4 437 /μlと改善したが,ここではLPV/rトラフ値が推奨値を下回ったため妊娠34週で1,200 mgに増量した.妊娠34週6日に前期破水となり緊急帝王切開術を施行した.帝王切開時,母体HIV-1 RNA 190 copy/ml, CD4 446 /μl,血小板数12.3×104lであった.児はHIV-1 RNA陰性,血小板29.6×104lであり,母児感染を認めなかった.HIV感染妊婦における血小板減少症に対しLPV/rの投与量を変更したHAART療法が奏功し,血小板の正常化と母児感染予防を得た症例を経験したので報告する.

Key words:HAART, thrombocytopenia, HIV, pregnancy, lopinavir

関東連合産科婦人科学会誌, 49(1) 63-66, 2012


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