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【症例報告】
妊娠29週に多発性肝梗塞を合併したHELLP症候群の1例
松岡 歩1), 木村 博昭1), 寺岡 香里1), 江口 修1), 神山 正明1), 駒 嘉安2), 富田 啓介3)
君津中央病院産婦人科1), 同 消化器内科2), 同 救急集中治療部3)
HELLP症候群が分娩後速やかに改善を認めない場合には,重篤な合併症や基礎疾患が存在する可能性がある.34歳,3回経妊0回経産(自然流産3回).28週0日より上腹部痛が出現し前医にて急性胃炎と診断,経過観察となった.29週0日,症状が悪化し再度受診した.血小板減少,肝機能障害を認め,HELLP症候群の疑いにて当院へ緊急搬送となった.直ちに緊急帝王切開を施行.術後ICU管理となったが,血液検査異常が遷延した.ダイナミックCT検査にて楔状の低吸収域を肝内に多数認め,多発性肝梗塞と診断した.DIC及び末梢循環不全に対する治療を施行した.徐々に全身状態の改善を認め,CTの低吸収域は消失した.基礎疾患の精査を行った所,抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たした.肝梗塞は非常にまれな疾患であり,周産期にはHELLP症候群や抗リン脂質抗体症候群がその発症に関与すると考えられている.中でも,短期間に多臓器不全をきたす劇症型抗リン脂質抗体症候群との関連が報告されている.これらは非常に厳しい予後が予測され,内科医師,ICU医師らと協同で診療にあたる必要がある.
Key words:HELLP syndrome, hepatic infarction, antiphospholipid syndrome
関東連合産科婦人科学会誌, 49(1)
73-78, 2012
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