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【症例報告】
クロラムフェニコール腟錠が有効であったと考えられるLipschütz外陰潰瘍の1例
神尊 貴裕, 秋山 育美, 中澤 明里, 古村 絢子, 落合 尚美, 中村 泰昭, 中川 圭介, 矢部 慎一郎, 五十嵐 敏雄, 梁 善光
帝京大学ちば総合医療センター産婦人科
Lipschütz潰瘍は原因不明の非性感染症性の外陰部潰瘍である.今回,性交経験のない若年女性に発症し,治療に難渋したが最終的にクロラムフェニコール腟錠が有効であったと考えられた症例を経験したので報告する.症例は15歳の女性.半年前より有痛性の深い外陰部潰瘍が出現し,近医産婦人科で外陰ヘルペスによる潰瘍として治療されたが改善がみられないため,当科を紹介され受診した.単純ヘルペス感染は抗原,抗体検査および現病歴から否定的であり,Behçet's病を疑ったがこれも内科・皮膚科・眼科での精査では否定的であった.このためLipschütz潰瘍と診断し,過去の報告にある抗アレルギー薬やステロイド外用等を用いたが全く改善は見られなかった.そこで,腟分泌物培養ではLactobacillus speciesのみの検出であったが,クロラムフェニコール腟錠および塗布剤を使用したところ1週間後には著明に改善し3週間後に治癒に至った.その後,再発なく経過している.Lipschütz潰瘍の難治性症例に対してクロラムフェニコール腟錠は重要な治療の選択肢となると思われた.
Key words:Lipschütz genital ulceration, chloramphenicol, Behçet's disease, Lactobacillus species, genital herpes
関東連合産科婦人科学会誌, 49(1)
79-83, 2012
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