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【症例報告】
子宮全摘術後に発症した直腸子宮内膜症による直腸狭窄に対しバルーン拡張術を行った1例―MRIゼリー法の導入手順―
近藤 壯, 塩野入 規, 塩沢 功
松本市立病院産婦人科
子宮内膜症はダグラス窩病変・異所性子宮内膜症の有無で手術難易度が変わるため術前診断が重要である.今回,我々は術前に直腸子宮内膜症を診断できず術後の腸閉塞を来し,MRIゼリー法を導入する契機になった1例を経験したので報告する.症例は43歳2回経産.薬剤治療無効の月経困難症,排便痛を認めMRIで子宮後壁に直腸の高度癒着を認めた.重症子宮内膜症の診断で腹式単純子宮全摘術を行った.ダグラス窩を開放した際,直腸表面に一部腹膜病変が残存した.手術後7日目以降,便秘を訴え術後40日目に粘血便が出現し来院.大腸内視鏡検査にて直腸狭窄を認め,直腸粘膜生検にて直腸子宮内膜症と診断した.バルーン拡張術後に排便可能となり退院した.MRIゼリー法で再評価も直腸狭窄は残存しているが現在,宿便イレウスは再発していない.直腸子宮内膜症は子宮内膜症の手術患者において4〜15%に認め決して稀ではない.手術が鎮痛目的の場合は注意が必要である.バルーン拡張術は通常吻合部狭窄に行われるが,本例でも有効であった.MRIゼリー法の導入時にはシーメンス1.5T用のMRI設定,便失禁予防,注入粘度,安全性に注意したが,本法により直腸子宮内膜症の診断を客観的に行うことができた.MRIゼリー法は,治療方針を立てる上で意義深い.
Key words:balloon dilation, rectal endometriosis, MRI jelly
関東連合産科婦人科学会誌, 49(1)
101-107, 2012
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