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【症例報告】
片側無形成腎を伴った非交通性副角子宮の1症例―無形成腎に長期間気付かず経過していた症例から学ぶ―


稲葉 不知之1), 稲葉 未知世2)
みさと健和病院婦人科1), 獨協医科大学基礎医学教育支援部門,医学教育室2)


 子宮の形成過程は泌尿器系臓器の形成と密に関係していることから,子宮奇形には片側無形成腎を伴うことが多い.代表疾患としてWunderlich症候群,Herlyn-Werner(HW)症候群,Obstructed hemivagina and ipsilateral renal anomaly(OHVIRA)症候群が有名である.子宮奇形に関する症例報告の大部分は,初経を迎える年齢から妊孕性が求められる年齢層で占められている.そのため,必然的に妊孕性の改善,維持,そして妊娠した場合の経過に論点が集まる.一方,閉経期前後の子宮奇形に対しては妊孕性が問われることがないため,子宮奇形そのものは問題になりにくく,外来でも経過観察がほとんどである.今回,卵巣内膜症性嚢胞を合併した子宮奇形(非交通性副角子宮)に対して根治術を施行した症例を経験した.患者は52歳で,妊娠分娩(帝王切開)を経験し,健康診断(人間ドック)も受診されていたが,片側無形成腎を指摘されたことはなかった.月経困難症,卵巣内膜症性嚢胞の増大を認めたため,手術へ踏み切ったが,術前に片側無形成腎の存在を見落とし,術中に判明するという苦い経験をした.患者の経緯や主病変にとらわれず,子宮奇形が存在する場合は必ず泌尿器系臓器を含めた他領域の奇形の有無を精査し,術前診断を正確にすべきという基本的姿勢の重要性を改めて認識する機会となった.

Key words:Müllerian anomalies, bicornuate uterus, unilateral renal absent kidney

関東連合産科婦人科学会誌, 49(1) 123-128, 2012


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