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【症例報告】
高度肥満に対する周術期管理:子宮体癌の一例から
荒岡 千景, 吉田 丈児, 木下 孝一, 橋本 志歩, 山田 研二, 宮田 あかね, 吉丸 真澄, 内田 明花, 佐藤 卓, 仲村 勝, 佐藤 健二, 小川 真里子, 高松 潔
東京歯科大学市川総合病院産婦人科
子宮体癌治療の第1選択は手術であるが,高度肥満例はリスクが高く,手術を躊躇する場合も少なくない.今回,高度肥満で合併症を有する子宮体癌症例に開腹術を施行した.症例は48歳,2経妊2経産.不正性器出血にて当院受診した.体重140 kg,身長160 cm, BMI54.7であった.類内膜腺癌G1であり画像上筋層浸潤は認めなかった.高度肥満に加え,糖尿病,高血圧,閉塞性動脈硬化症を有したため,手術はリスクが高いと判断し放射線療法を施行したが,5か月後の内膜生検で腫瘍遺残を認め,腹式単純子宮全摘出術及び両側付属器摘出術施行となった.肉眼的に筋層浸潤は認めずリンパ節郭清は行わなかった.手術時に以下に示す工夫を行った.1)開腹時,腹膜と皮膚を絹糸で縫合し開創器から腹壁が滑脱することを予防した.2)閉腹時,側方への張力でし開することを防ぐため,Smead-Jones縫合で筋膜縫合を施行した.3)死腔防止のために閉鎖式皮下ドレーンを挿入し陰圧をかけた.4)皮下及び皮膚は垂直マットレス縫合し,創面全体が適度に密着し均等に力がかかるように創の両サイドに太巻きガーゼを置くBolster縫合を,一部改変して行った.術後は低分子ヘパリンを3日間皮下注,さらに腹帯の長期装着を指導した.術後経過は良好で,血栓症や創部のトラブルは認めなかった.高度肥満例は血栓症・創部し開などのリスクが高いが,抗凝固療法の進歩や腹壁縫合・麻酔管理の工夫などによって,より安全に手術の施行が可能であると考えられた.
Key words:Perioperative managements, Obesity, Wound closure technique
関東連合産科婦人科学会誌, 49(1)
129-135, 2012
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