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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【教育セミナー2】
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医合格のポイント ―審査員はここをみる―
明楽 重夫
日本医科大学女性診療科・産科
腹腔鏡手術はその低侵襲性と整容性から,1990年頃より我が国において急速に適応が拡大され,普及してきた.しかし,本手術は二次元のモニター下に特殊な鉗子を用いて行うために視野も限られ,縫合・結紮などの手技もやや困難なものとなっている.このため,腹腔鏡手術には開腹手術にはない独特の合併症が存在し,その発生率は減少傾向にあるとはいえないのが現状である. 日本産科婦人科内視鏡学会では,内視鏡外科医の資格審査機構として,技術認定制度を発足させた.ここでは各手術操作がきちんと基本通り行われているか,独力で安全・確実に手術を完遂できるか否かが判定される.従って,学会主催の学術研修会や実技研修会を受講し,技術認定医を目指すことは合併症の予防の上でも意義が大きい. 本制度で要求されるレベルは@内視鏡関連学会で十分な知識を得ている,A安全・確実で計画性の高い手術ができる,B施設を問わず独力で手術を完遂できる,C専門医取得後2年以上内視鏡手術に従事している,というものである.すなわち安全性の担保が主目的であり,決してエキスパートレベルを要求しているものではない.これまで9年度にわたり技術認定の審査が行われ,累計で323名が認定された.これは日本産科婦人科内視鏡学会の全会員数の13.5%を占める.合格率はここ5年間は約50%程度で推移しており,狭き門となっている. 技術認定の審査は書類審査とビデオ審査からなり,ビデオ審査は25評価項目で審査される.各項目は2点満点で,計50点満点中30点以上が合格となるが,安全原則違反があった場合には不合格となることがある.受験者には希望により審査委員によるコメントが開示され,評価がフィードバックされる仕組みとなっている. ビデオ審査の合格の秘訣は,審査員がチェックするポイントを押さえることに尽きよう.以下に各審査項目別にそのポイントを列挙する. @トロカールの挿入・抜去と視野の確保 助手と共に基本をしっかりとおさえているかが審査される. A切開・剥離操作 スムーズさと正確さ,そして安全性への意識が問われ,体外法では評価ができない項目が多い.パワーソースの作動原理をしっかり理解することが特に大切である.また,卵管,卵巣,小腸の愛護的操作が求められる. B縫合・結紮操作 合否の分かれ目となることが多い.操作の基本を修得し,日頃からドライボックスなどで技術の研鑽に励むことが大切である. C出血のコントロールと止血操作 ここでは吸引管の適切な使用とエネルギー出力装置の使い方がポイントとなる.止血部を確実に視認し,ピンポイント止血を心掛ける. D手術運営の可否 ここでは総論的な評価を受ける.腹腔鏡手術の適応を遵守した上で,手術の目的を明確にして,必要かつ十分な術式を心掛ける. 本講演では,以上に挙げた項目につき,詳細に述べたい.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
261-262, 2012
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