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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【教育セミナー4】
婦人科腫瘍専門医資格について
渡利 英道
北海道大学産婦人科
婦人科腫瘍専門医は日本婦人科腫瘍学会が認定する専門医資格である.現在の日本婦人科腫瘍学会の会員数は約2900名で,580名が婦人科腫瘍専門医となっている. 日本婦人科腫瘍学会では2001年9月よりわが国における婦人科腫瘍専門医育成の重要性について議論を重ね,専門医制度規則および修練ガイドライン最終案を2004年7月の評議員会・総会で承認し,日本婦人科腫瘍学会専門医制度が発足し,2005年から実際の修練がスタートした.運用にあたってはまず一定の資格基準を満たす393名の婦人科医を婦人科腫瘍暫定指導医として認定し,その指定修練施設で研修を行う修練医の登録受け付けを開始した.第1回の専門医試験は2007年に実施され,暫定指導医の中から285名の専門医が合格した.暫定指導医資格の有効期間は5年間と定められており,2010年で暫定指導医資格は終了した.2008年からは専門医制度の修練カリキュラムを修了した専攻医の受験が始まっている. 修練医は修練カリキュラムに基づいて,日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得後に指定修練施設において3年以上の研鑽を積むが,この間に婦人科癌症例(手術,放射線治療,化学療法などを含む)150例以上の経験を必要とし,手術は浸潤癌の執刀者として30例以上,第一助手として30例,その他の助手として40例を含めて合計100例以上を経験することが求められており,そのうち広汎子宮全摘術の執刀経験が15例以上必要である.化学療法,尿路系手術,消化管手術にも精通し,緩和ケアにも習熟することが求められている.指定修練施設は毎年1回,その要件の確認や症例数報告等の書類を提出して,認定の継続がなされる必要があり,2011年度は164施設が指定修練施設として認定されている. 専門医試験受験の申請要件として,婦人科腫瘍に関する筆頭者としての研究発表2件以上(論文1編を含む)が必要であり,修練期間中に年1回以上婦人科腫瘍学会の教育プログラムならびに学術講演会に出席しなければならない.婦人科腫瘍医はがんに関する基盤的な幅広い事項,すなわちがんの細胞生物学,病理・病態,診断,治療,予防に関する知識・技術を取得していることが重要であることを勘案して,平成24年度修練開始者からがん治療認定機構が認定するがん治療認定医資格を取得していることが必須の申請要件とされた. 専門医資格認定試験は,年1回,通常は12月に行われ,試験は筆記試験と口頭試験から成っている.筆記試験はmultiple choice問題計100題を2時間で解答し,出題範囲は修練カリキュラムに基づき,疫学,診断,治療,予防に関する問題だけでなく,広く横断的な知識,特に病理学,分子生物学,臨床試験,倫理,緩和ケア等に関する知識も問われる.口頭試験は2名の専門医により,代表的な症例に対する議論,経験症例に関する質問,専門医としての心構えなどについての質問が行われる.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
265-265, 2012
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