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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))

【ワークショップ1】
早期卵巣癌におけるリンパ節郭清不要症例の抽出にMultidetector CTおよびMRIは有用か


宮本 強1, 橘 涼太1, 近藤 沙織1, 鹿島 大靖1, 浅香 志保2, 藤永 康成3, 塩沢 丹里1
信州大学医学部産科婦人科学教室1, 信州大学医学部附属病院中央検査部2, 信州大学医学部画像医学講座3


 卵巣癌では腹腔内I期相当の早期癌症例であっても,約10〜15%程度に後腹膜リンパ節転移が存在する可能性があるとされ,日米とも治療ガイドラインでは,骨盤から傍大動脈リンパ節郭清(生検)が推奨されている.一方,傍大動脈までの後腹膜リンパ節郭清により,長大な創部痕の形成,術後腸閉塞,下半身のリンパ浮腫などの合併症や後遺障害が生じる可能性があるため,リンパ節郭清が不要な症例の正確な抽出は重要な課題である考えられる.現時点ではI期相当のGrade 1〜2症例はリンパ節転移の頻度は低く,郭清省略の対象と考えられるが,それでも約5%程度の転移の報告がある.また術中迅速組織診断でGrade分類まで行うのは困難であることも考えられる.
 一般に,病期の術前評価はCTやMRI,PET/CT等の画像機器によってなされているが,これまでリンパ節転移を術前に評価した検討では,感度は40〜80%程度にとどまっている.この理由としては,CTでは現在主流である多列検出器(multidetector)を用いていない検討が多いこと,“腫大”のカットオフ値を短径1cmとしていること,MRIでは拡散強調画像を用いていないこと,などが考えられる.そこで,信州大学で過去6年間に後腹膜リンパ節郭清を含む手術を受けたpT1〜2の卵巣癌症例46例について検討したところ,8例(17.4%)にリンパ節転移を認め,その転移リンパ節14個についてはCTで短径10mm未満が7個あるものの,全て短径5mm以上であった.一方,リンパ節転移のない38例中20例は,CTで短径5mm以上のリンパ節が認められなかった.この結果からCTなどの画像機器がリンパ節郭清不要症例抽出に役立つ可能性が考えられたが,その目的のためには,リンパ節径の適切なカットオフ値を設定し,感度を上げ,かつ偽陰性症例を減らす必要がある.それを検討するため,我々は,最も汎用されているmultidetector CT(MDCT)と,軟部性状の評価に優れたMRIにも注目し,以下の臨床試験を計画している.
 すなわち,早期卵巣癌と考えられる患者を対象に,2.5mm幅の造影MDCTおよびMRI(T2強調,拡散強調,T1造影)を撮影し,リンパ節の径や性状を評価する.その後,手術で摘出されたリンパ節の転移を病理学的に検索し,画像評価との対比を行う.これにより,リンパ節転移のない症例を抽出可能か検証し,また同時に術中迅速診断の精度についても検討したい.


関東連合産科婦人科学会誌, 49(2) 270-270, 2012


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