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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【ワークショップ1】
卵巣癌の臨床試験におけるPET-CTの導入とその問題点について
蝦名 康彦, 白川 得朗, 山崎 友維, 牧原 夏子, 宮原 義也, 新谷 潔, 中林 幸士, 山田 秀人
神戸大学産婦人科
PET-CTは,治療前のステージング,再発診断,治療効果判定のために広く用いられ,いまやがん診療において不可欠な検査になっていると考える.しかし,臨床試験における評価法としては議論があり,改訂版RECIST1.1において,唯一「増悪」の判定の補助として使用するFDG-PETが掲載されているのみである.すなわち,ベースラインでPET陰性かつ経過時のPETが陽性となった場合は新病変としてPD.しかし,ベースラインでPETを施行しておらず,経過時に陽性となった場合には,FDGの集積のみではPDとせず,CTの形態画像上の増悪を伴う場合のみをPDとすると規定されている.本発表では,このような背景をふまえて,卵巣癌の臨床試験にPET-CTを用いることの問題点,可能性について言及したい. CA125によるマーカー再発時点での化学療法は生命予後を改善しないと報告されている.しかし,マーカー上昇の時点でPET-CTを行うと,何らかのFDG異常集積を認めることが多い.腫瘤形成を伴わないFDGの集積を播種性再発とみなし,患者と十分話した上で化学療法を中心とした再発治療を行なうことが多いが,早期治療による予後改善に関するエビデンスはないのが現状である.また再発治療は,Disease-free interval(以下DFI)を考慮して方針を決定する.PET-CTの導入により,従来より早期に再発病変が明らかとなり,結果としてみかけのDFIが短縮することにより,プラチナ感受性の判断が変っている可能性がある.そこでPET-CTを用いた再発診断におけるDFIと再発治療経過について検討した. 初回治療にて寛解(画像診断で病変を認めず,かつCA125値20U/ml未満)し,経過観察中にPET-CTにて再発と診断した卵巣癌14例を対象とした.2例(粘液性,癌肉腫)以外は,いずれもCA125値の上昇を契機として,PET-CTを施行し再発診断に至った.PET診断までのDFIは,中央値10.7カ月であった.TFIが6カ月未満の症例はなく,6〜12カ月が7例,12カ月以上が7例であった.PET-CT所見の内訳(重複あり)は,腹膜播種9例,リンパ節転移7例,肺転移1例であった.転院した1例を除き,12例にTC療法を,1例に放射線療法を行った.治療が終了した10例中,8例が軽快,2例は増悪し次のレジメンへ変更した.なおTC療法中に増悪しレジメンを変更した2症例のDFIは,8.8カ月,10.7カ月であった.今回検討したなかでは,DFI6カ月未満の再発と診断しプラチナ抵抗性とした症例を認めず,PET-CTの導入によりDFIが短縮し治療方針が変っている症例は存在しなかった. このようにPET-CT導入後に治療現場で起きていることをまず検証した上で,臨床試験における評価法が,既存の形態に基づく腫瘍量の評価から,機能的評価への移行可能かというの検討がなされるべきであると考える.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
271-272, 2012
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