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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題7】
経腟分娩後に診断された癒着胎盤に対し待機療法で子宮温存可能であった一例
瀬川 恵子, 納田 容子, 中島 泉, 松崎 結花里, 山本 葉子, 野村 可之, 松永 竜也, 杉浦 賢
横須賀共済病院産婦人科
【緒言】癒着胎盤は,前置胎盤や帝王切開既往等がリスク因子として知られており,これらを伴わない癒着胎盤は極めて稀で,分娩前に診断することは非常に困難である.今回我々は,経腟分娩後に初めて癒着胎盤の診断に至り,待機療法により子宮温存できた一例を経験したので報告する.【症例】29歳0G0P.40週1日,自然経腟分娩後に胎盤が娩出されず,癒着胎盤疑いにて当院へ搬送となった.胎盤は前壁付着であり,エコー・MRIで胎盤内に血流を認めたため癒着胎盤と診断された.出血コントロール可能であったため,抗生剤を投与しながら自然娩出待機とした.産褥6日目のMRIにて胎盤内の血流は減少傾向であることを確認できていたが,徐々に炎症所見の悪化を認めたため,産褥10日目に全身麻酔下で胎盤娩出を試みることとなった.術前に両側内腸骨動脈バルーン留置を行い,すぐに開腹手術へ移行できる準備を整えて経腟的に胎盤を牽引したところ娩出に至った.術中出血は少量で,病理所見は壊死性変化を伴う胎盤であった.【まとめ】胎盤娩出困難時に癒着胎盤と付着胎盤の鑑別を行うことは容易ではなく,実際には用手的剥離術が選択される場合も数多く存在するであろう.しかしながら,その中には本症例の様にリスク因子を伴わない癒着胎盤が隠れており,大量出血をきたす可能性がある.臨床的な癒着胎盤が疑われた場合には無理な剥離術は行わず,待機療法を選択することも重要であると認識させられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
302-302, 2012
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