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第123回学術集会(平成24年6月17日(日))
【一般演題7】
子宮温存が可能であった経腟分娩後胎盤遺残の2症例
加來 繭子, 菅原 恒一, 折戸 征也, 今北 哲雄, 清水 雄二
公立福生病院産婦人科
経腟分娩後の胎盤遺残に対し,産褥期大量出血,感染を来たしたものの,保存的治療を行い子宮温存が可能であった2症例を報告する.【症例1】31歳1経妊0経産.妊娠38週正常分娩後,胎盤剥離徴候を認めず胎盤用手剥離を試みるも,半分程度の胎盤が遺残した.子宮収縮剤及び抗菌薬を投与し,断続的な出血に対し輸血を施行したが,胎盤剥離徴候を認めなかった.子宮温存及び非観血的処置の希望があったため,産褥6,15日目にメトトレキサート(MTX)療法(50mg/m2)施行,感染徴候の改善を待ち産褥21日目に退院,外来経過観察とした.その後感染徴候を再び認めたが,産褥26日目の胎盤自然娩出後,全身状態は速やかに改善した.経過中,赤血球濃厚液18単位の輸血を要した.【症例2】34歳0経妊0経産.妊娠39週吸引分娩後,胎盤剥離徴候を認めず,全胎盤が遺残した.出血性ショックのため輸血を行い,子宮収縮剤及び抗菌薬投与で経過みるも胎盤剥離徴候を認めず,産褥3日目のMRIで癒着胎盤が疑われた.子宮温存の希望が強いため,産褥4日目にMTX療法(50mg/m2)施行.その後感染徴候が悪化し早期の娩出が必要と判断,産褥11日目子宮動脈塞栓術(UAE)施行.UAEによる胎盤への血流途絶を確認後,産褥13日目に全身麻酔下の胎盤用手剥離が可能となった.その後感染徴候の改善を待ち,産褥24日目に退院.経過中,赤血球濃厚液12単位の輸血を要した.今回の症例のように,臨床的に癒着胎盤と考えられた胎盤遺残に対し,十分なインフォームド・コンセントをした上で保存的治療を選択した場合,大量出血や感染等の合併症を慎重に管理することが重要であると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 49(2)
303-303, 2012
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